私の趣味の一つに「カメラ散歩」がある。「カメラをぶら下げて、電車に乗って適当な駅で降りて、知らない街をぶらぶらと散歩する」というもの。もちろん誰も誘わない気ままな一人旅だ。カメラ好きな私が定年後に思いついた自分流健康法の一つである。2か月前に変形性膝関節症を患って、寝起きにトイレに行くのも困難なほどだったが、整形外科治療の結果、何とか痛みが治まったので、久しぶりに試しに歩いてみたかった。
11月の快晴に恵まれたある日、今回はいつか行ってみたかった焼津漁港を目指した。浜松駅から9時8分発の上り電車でちょうど1時間で焼津駅に着いた。駅前の観光案内所で焼津市内の観光案内地図をもらって焼津漁港を目指しぶらぶら歩く。駅前から真っ直ぐ東に300メートルも歩けば漁港だった。大型漁船が見事に並んで停泊している雄大な風景に感動して、何枚かシャッターを押す。観光客らしき人は誰もいない。釣り糸を垂れている人がいるだけのずいぶんのんびりした漁港風景だった。
少し南にもう一つ大きな小川港(こがわこう)という魚港がある。ここの「小川港魚河岸食堂」という地元の漁師や仲買人などが通う、仲買人組合直営の食堂の魚料理が美味しいらしい。今日はここの海鮮丼を食べるのがもう一つの楽しみなのだ。焼津漁港から小川港まではけっこう距離があった。ひたすら海岸沿いの道路を歩いた。途中県の水産技術研究所が運営している「展示室うみしる」という小さな水族館が無料で開放されていたので立ち寄ってみた。大きな水槽には数多くの海の魚が泳いでいた。小さな子供を連れた若いお母さんが3組ほど来ていた。
焼津漁港から40分ほど歩いただろうか、「地方卸売市場小川港魚市場」と書かれた大きな魚市場に着いた。市場越しの快晴の空に富士山がはっきりと見えた。この時期としては珍しく雪のない黒い富士山だったのは少し残念だった。市場の真ん前に今日のお楽しみの「小川港魚河岸食堂」があった。12時少し前だったが、すでに入り口には10人以上の行列ができていた。市場を見学しながら少し待つことにした。市場の関係者はこの時間はもう誰もいないので閑散としていた。朝の市場が終わっていろいろなものが散乱している状態を想像していたが、床はきれいに清掃されて、コンテナ類もきちんと整理整頓されていたのには感心した。
12時半頃になったら行列が無くなったので食堂に入った。それでも6人ほどが食券販売機の前に並んでいた。食堂のスタッフの地元のおばちゃんたちが忙しそうに動き回っていた。食堂はセルフサービス、お目当ての海鮮丼の食券を買って一人席に座って待つこと数分。番号を呼ばれて海鮮丼を受け取って早速いただいた。もちろん新鮮で美味しかったのは言うまでもない。
目的の海鮮丼でお腹を満たしたところで、来た時とは違う街中の道を、途中焼津水産高校の前を通って約3km、ひたすら駅に向かって歩いた。2時28分発浜松駅行きの電車に乗って、バスに乗り継いで4時には帰宅した。この日の「カメラ散歩」は総歩行距離10.1km、19,694歩だった。さすがに少し疲れたが、膝も痛くならずに歩く自信がついた。この日の風呂上がりのビールが美味しかった。(2024.11.24)