近年カメムシが大量発生し被害が甚大だそうである。特に果物の被害は深刻で地元の柿農家やミカン農家では生活に直結する大問題になっている。我が家でも小さなカキの木が一本、2坪ほどの畑には野菜を植えて楽しんでいるが、やはりカメムシにやられている。庭のピーマンの葉の裏を覗いてみたらカメムシが一匹休んでいた。カメムシはタガメやアメンボと同じ仲間で日本では1400種もあるというが、これは一般的なツヤアカカメムシのようだ。見た目はきれいで可愛らしい虫だが、柿やリンゴ、ミカンなどの果樹のほとんどに被害をもたらす厄介者だ。
カメムシのライフサイクルは、夏に孵化した後、山のスギやヒノキの実を吸汁摂食して成長し、秋になると山からいろいろな方向へ分散して果樹や農作物を加害する。冬になると人里や山の樹木の葉裏で越冬する。春になると成虫が越冬から覚めて山で繁殖期を迎え、繁殖後は親は秋までに一生を終える。新しい幼虫・成虫はスギやヒノキの実、果樹を吸汁して成長する。寒さには弱いので越冬できずに死亡する個体もあるが、温暖化により越冬できる個体が増えたのも大量発生の理由の一つだという。餌となるスギやヒノキの実が増えているのもカメムシが増えている第二の理由だそうだ。最近はいままでいなかった東北地方でも見かけるようになったのは、台風で運ばれてきたのではないかと推測されている。ただし、この地方では冬は寒いので越冬するのは難しいようだ。
カメムシは光に集まる習性があるので、夏の夜などは網戸にいたり部屋の中に侵入することもある。しかし、手でつまんだりすると悪臭を放して身を守る習性がある。アルデヒド類の化学物質で強い臭気と刺戟性がある。過度に刺激しなければ匂いを出すことはないのでやたら手で触らないことだ。
果樹農家では当然農薬散布でしっかりカメムシ対策をしているのに加害されてしまう厄介者だ。農薬効果もせいぜい2週間程度で、毎週やらないと効果がないという。もっと強力な農薬で絶滅させれば問題は解決する。という単純な話ではない。益虫も殺してしまうし、なにより人間の健康が脅かされてしまう。地球上の動物・植物のすべての生き物は、その生態系の中で絶妙なバランスで保たれている。「どれとどれがどのようなバランスで」というのは未知の世界で解明されているわけではないが、カメムシに限らず、絶滅して良い生き物はこの世にはないのだ。(2024.10.20)