岐阜県の東南端の愛知県との県境に近い、ある「道の駅」のトイレに寄ったら、目の前に写真のような張り紙がしてあった。しかも東西南北に丁寧に赤丸がしてあった。
「一歩前で 東や西に振り向くな 南の人が北無しと云う 明智光秀」
何時から始まったのか定かではないが、最近の日本の公衆トイレには必ずと言っていいほど貼ってある男子トイレの注意書き。公共施設などでは「少し前へ」「もう一歩前へ」などとおとなしめだ。大型スーパーのトイレなどでは「いつもきれいにお使いいただきありがとうございます」などと、逆説的に丁寧に注意書きされている。
しかし岐阜県の道の駅にあったのは、最後に「明智光秀」と名乗っている。明智光秀は美濃の国土岐出身だから出身地には違いはない。織田信長から絶大な信頼を得て低い身分から一国一城の主へと出世した戦国武将だ。そんな明智光秀が「本能寺の変」で、織田信長を自害に追い込んだのは何故なのだろうか?・・・などという歴史上の難しい話はここではしない。男子トイレの注意書きの話しである。
男子トイレのメッセージ集を集めてみた。
「一歩前 振って散らすな 竿の露」
「あと一歩 前出て狙え 松茸の露」
「一歩前へ 君のはそんなに 長くない」
「急ぐとも 心静かに手を添えて 外にこぼすな松茸の露」
「急ぐとも 外に漏らすな玉の露 吉野の桜も 散らば見苦し」
まだほかにも俳句風、短歌風などいろいろ工夫したメッセージがたくさんある。どのメッセージも伝えようとしている内容はただ一つ「こぼすな!」の警告である。これだけ念入りに警告しているのに、世の中にはこぼす人が実に多いということだ。この道の駅の駅長さんも、何とか汚れない工夫はないものかと苦心した末に、「明智光秀」にすがるしかないと思いついたのだろう。
日本ほど公衆トイレのきれいな国はないと思う。街の公園の公衆トレも毎朝担当者がていねいに掃除している。道の駅に限らず高速道路のサービスエリアなど、トイレのきれいなところが人気がある。しかし、せっかく朝きれいに掃除されたトイレも、午後には足の踏み場もないほど汚れているトイレもある。みんな落ち着いて注意書き通りに用を足せば、こんなには汚れないと思うのだが。犯人は子どもか、若者か、高齢者か。男子トイレの汚れは永遠の課題だ。(2024.8.25)