カタバミは春から夏にかけてハート形の葉っぱを茂らせ、一斉にピンクや紫や黄色の花を咲かせる、全国どこでも見られる野の花である。見た目は可憐で可愛いが、繁殖力が非常に強く駆除が厄介な雑草とよばれる植物だ。
カタバミは夕方になると葉を閉じてしまう。この時の姿が葉の片側が食べられて欠けたように見えることが、和名の「片喰(かたばみ)」と呼ばれるゆえんだ。カタバミが葉を閉じるのは、夜間の放射冷却による熱が逃げるのを防ぐためと考えられる。ちゃんと省エネを考えているのだ。さらに葉ばかりでなく花も閉じる。曇りや雨の日は花は咲かない、光が当たらない時は虫が訪れる可能性も低いので花を閉じて花粉のロスを防いでいる。
カタバミの葉で金属を磨くと汚れが落ちてピカピカになる。試しに黒くなった10円玉を磨いてみると魔法のようにピカピカになる。カタバミの葉や茎は虫に食べられないようにシュウ酸を大量に含んでいる。口に含むと酸っぱいのはこのためだ。だからカタバミの和名は別名「酢漿草(かたばみ)」ともいう。
カタバミの葉はかわいいハート形をしている。鎌倉時代から戦国武将の間で家紋として好んで用いられた。一度根ずくと除去が困難なことから、繁殖力が強く「子孫繁栄」のシンボルとなったのだ。こんな小さな雑草に美しさや強さを見出した昔の人の自然へのまなざしには脱帽だ。カタバミの花ことばは「輝く心」である。魔法で金持ちになるのを夢見るより、せっせと自分の心を磨きたいものだ。
カタバミの種類もたくさんあるが、写真はムラサキカタバミだ。南アメリカ原産で江戸時代に鑑賞用に国内に持ち込まれた帰化植物だ。我が家の庭も今の時期は庭中いろいろな種類のカタバミの花だらけだ。花が咲いている間は可愛いのでそのままそっとしている。余りにも増えすぎるので花が終わると駆除するが、所詮雑草の駆除はいたちごっこで、無駄な抵抗なのは十分承知している。(2024.5.20)