久しぶりに懐かしい看板に出会った。浜松市内の、ある神社の境内である。木製のしっかりした作りで宮司さんの心遣いが感じられる。
「よい子はこの<灯籠>にのぼらない!」
今の子どもがこの看板を見て果たして何と理解するだろうか。まずは「よい子」の基準が分からない。勉強ができる子が「よい子」なのか、スポーツができる子、親の言うことを良く聞く子なのか。
「のぼって灯籠を壊すと困るから」という趣旨ではなく、「のぼって落ちてケガをしたら大変だから」との心遣いからと理解する。過去にそんな事故があったのだろうか。「僕はわるい子だからのぼるよ」という子は多分いないと思う。子どもは基本的にみんな「よい子」なのだ。
むかし「良い子、悪い子、普通の子」というのがあった。1970年代のテレビ番組で萩本欽一主演の「欽ちゃんのどんといってみよう」だ。三者三様のやり取りが笑いを誘うバラエティ番組だった。三人とも憎めない子どもたちだった。
われわれの子どもの頃は学校から帰ると、ランドセルを部屋に放り投げて日が暮れるまで川遊びをしたり、セミやトンボ捕りに夢中になったものだ。今は神社の境内で遊ぶ子どもはほとんど見ない。学校から帰ったらおけいこ事と、高学年は学習熟で忙しい。遊ぶ暇がないほどみんなよい子にならざるを得ない。果たしてどちらが幸せなのだろうか。世の中の価値観が変わったので、単純にどちらとも言い難いが。(2024.5.6)