朝回日日典春衣 毎日江頭尽酔帰 酒債尋常行処有 人生七十古来稀 |
「朝廷から戻ってくると、毎日のように春着を質に入れ、いつも曲江のほとりで泥酔して帰ってくるのである。酒代の借金は普通のことで、行く先々にある。この人生、七十まで長生きするのは滅多にないのだから、今のうちにせいぜい楽しんでおきたいのだ。」 |
1200年以上も昔の中国の詩人杜甫は、「曲江」という詩の中でこのような意味の詩を書いている。この時代は70歳まで生きるのは稀なことだった。杜甫も肺を患い59歳でこの世を去っている。以来この詩が由来となって、70歳を「古稀」の祝いとするようになったという。 | |
私もとうとう「古稀」を迎える年齢になった。今や古稀は稀でもなんでもなくなった。誰でも初めて経験することだが、精神的には今までと何の変化もない。しかし肉体年齢は如何ともし難く、以前より集中力が続かなくなったり動作が鈍くなった気がする。いろいろなことがテキパキできなくなり、肉体的に年齢相応になったのは実感する。
予てよりやりたいと思っていたことに水彩画がある。描いてみようと思う気持ちは昔からあって、絵具や筆、画用紙は数年前に買い揃えてあって、いつでも描く準備はできていた。しかし絵画教室へ通い本格的に水彩画を勉強するほどの情熱はなく、ただ何となく自分流で描くのが好きだった。古稀を迎える春に思い切って描くことにした。文章を書くのも好きなので、絵日記風に気ままに描くことにした。杜甫ではないが、今のうちにせいぜい楽しんでおこうと思うようになったのだ。(2012・3・20)