私の住んでいる団地から歩いて10分ほどの、中心市街地の真ん中に、緑豊かな「椎ノ木谷の里山」がある。昭和30年代頃までは、市内のいたるところに見られた里山は、次第に田畑を耕す人が減り、荒れた樹林や沼湿地が目立ち始めた。やがて開発計画が盛んになり、ここ椎ノ木谷も市内の私立高校の運動場になる計画が持ち上がった。地元の自然愛好家を中心に、「貴重な自然を守ろう」と自然研究会の人々が訴え、さらに「生活環境の身近なところに緑豊かな空間を」と訴える自治会や子供の未来を考えるPTAなどが応援。これを受け浜松市が自然環境を調査したところ、絶滅危惧種とされるミカワバイケイソウやシロバナカザグルマなどの希少種を含む385種の植物、カワセミやアオサギなどの34種の鳥、オニヤンマ、ゲンジボタルなどの211種の昆虫が生育していることが判明した。平成15年市民ボランティア「椎ノ木谷保全の会」が設立され、浜松市と市民が協働で緑地保全を開始。平成17年には静岡県内で初めて「特別緑地保全地区」の指定を受けた。取材に訪れたこの日も、地元の市民ボランティアのメンバーが里山の整備にもくもくと汗を流していた。田植えの終わったばかりの早苗が美しく輝き、メダカやオタマジャクシ、アメンボウが泳いでいた。シオカラトンボやムギワラトンボはよく見かけるが、真っ赤なショウジョウトンボとギンヤンマが飛び回っていたのには驚きと共に懐かしさを感じた。(2011・6・14)