アンドレの「デジタルつれづれ草」91段

“大楠の下で51年ぶりの再会”

く雲立の楠
八幡宮の「雲立の楠」

私の好きなものの中に巨樹・巨木がある。 日本各地に巨樹・巨木はたくさんあるが、 わざわざ行くのはカネとヒマがかかる。だ から、旅行に行って出会った時に写真に 撮ってきたりする。身近にも巨樹・巨木は あるものである。浜松駅からほど近くの八 幡宮境内にも県下でも有数の「雲立の楠」 と呼ばれる大クスがある。「1572年、 三方が原の合戦に破れた徳川家康が武田軍から 逃れて、この大クスの太い幹にある洞穴に 潜み武運を祈願した」、と伝えられるか ら、かなりの樹齢である。

実は今回は巨樹・巨木の話がテーマではな い。4月の日曜日に久し振りに小学校の同 窓会が、ここ八幡宮の「楠倶楽部」で行わ れた。八幡宮は30数年前、私が結婚式を 挙げた思い出の場所でもある。この楠の巨 木の前でかみさんと二人で撮ったカラー写 真が、今ではセピア色に変色した記念写真 がある。共に若かりし20代の頃である。 私が静大附属小学校を卒業したのは昭和3 0年、1955年のことである。今から5 1年も昔である。そんな昔の学友が久し振 りに顔を合わせた。今回は2組あったうち の我々のクラス1組だけの同窓会だった。 今回集まってくれたのは、総勢41名の内 男性7名、女性5名の12名と担任の0先 生だった。全体の3分の1と少なかった が、この年齢になると健康状態や家庭の事 情で全員集合は難しい。

遠くは富山県、東京都、静岡市から駆けつ けてくれた。勿論今までにも同窓会はあっ たので、さすがに51年ぶりの友達はいな かったが、海外勤務の長かったK・S君は ほんとに久し振りだった。「やっと国内に 落ち着くことが出来るよ」・・・と、久し 振りに会ったK・S君の頭は、今ではすっ かりまぶしく光っていた。そんな彼が某1 部上場企業の社長に抜擢されたことを知っ たのは、数日前の新聞紙上だった。同窓会 の時は「子会社に行くことになったよ」と は言っていたが、・・・・お祝いのメッ セージを送らないと。

担任の0先生は今年84歳、相変わらずお 元気でピンピンしておられた。しかし、い つも同窓会のたびに感心するのは、学校の 先生の記憶力の素晴らしさだ。長い教職員 生活の中で教えた生徒の数は数百人のはず だが、何10年ぶりに会った生徒の名前を 1人1人、いとも簡単に当ててしまった。 そればかりか、この日持ってきた当時の入 学式、卒業式の記念写真の小さな顔を見 て、今日出席していない生徒の名前を当て たり、父兄の名前まで当ててしまった。 「よく覚えていますね」と言ったら「やあ !意外と覚えているもんだよ」とあっさり 答えられた。こちらは目の前の友達の名前 がなかなか思い出せないこともあるのにで ある。12人という人数は全員1つのテー ブルを囲んで話が出来るので都合が良かっ た。大勢だとテーブルが別れてしまって、 全員で話をするということは出来ない。

人数が少なかったので1人1人近況を報告 し合った。まだ会社の役員で頑張っている K・S君、H・S君、悠々自適の日々を 送っているY・N君、奥さんを若くしてガ ンで亡くしたS・I君、ご主人の転勤で富 山に住んでいるH・Fさんは、「初めての 雪国暮らしで大変よ」と苦労話。それぞれ みんな孫のある年令になってきたので、メ ダカの学校の唄の歌詞ではないが、「だれ が生徒か先生か?」わからないほどの頭や 顔になってきた。60年以上も人生してい ると、それぞれ様々な人生経験をしてきて いるはずだ。若くして自殺してしまったT ・Y君のことも話題になった。同窓会に出 席するメンバーはいつも決まってしまう が、同窓生の中でも、こうして同窓会に出 席できる人は現在幸せな人生を送っている 人達であるとも言える。

この日は仏滅にも関わらず2組ほどの結婚 式が行われていた。心配した雨も上がっ て、ときどき窓の外を白いドレスを着た花 嫁と花婿の歩く姿が見えた。我々は3時間 ほどの楽しいひと時を過ごして、記念の集 合写真を撮って、「久し振りに浜松に帰っ てきたので、これから親の墓参りに行く よ」と言う友達も多かった。またの再会を 約束して解散となった。O先生は「とても 今日の同窓会が楽しかったよ」と喜んでく ださった。迎えのタクシーで先生を送った 後、それぞれ解散していったが、女性3人 と私の4人のグループが最後に残った。み んな浜松駅まで行くというので4人でタク シーに乗り込んで、「まだ少し時間が早い から名鉄ホテルでお茶していかない?」と 話がまとまって、名鉄ホテルの1階喫茶店 で二次会をした。

いわゆるおばさんたちの話は、同窓会の席 とは違って、二次会の席では人数も少なく なったこともあって、本音の話がポンポン 出たりするものだ。女性3人男性1人だっ たが、同窓生同士ということもあり、男性 が1人いることはほとんど無視されて、い ろいろな内輪話が聞けて楽しかった。Y・ Mさんは、「32歳になる娘がいつまでも 家にいるので困ってるのよ」と嘆き節を始 めた。「娘さんって、“ミス浜松”になっ た子でしょ」といったら、「ミス浜松じゃ ないわよ。あれはミステイク浜松だわよ」 ・・・・と、親の悩みはいつまでも尽きな いようである。最近は結婚したがらない娘 や息子で悩む親が多い。どこの家庭にも悩 みはあるものだ。

そんなこんなで、とにもかくにも楽しい同 窓会の一日ではありました。(2006・5・26)

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