アンドレの「デジタルつれづれ草」84段

“ああ!ついにフイルムカメラが消えてい く”


時代の流れでリストラされた?我が家のフ イルムカメラは7台もあった

1月12日、あのニコンがフイルムカメラ 部門から撤退し、カメラ事業をデジタルカ メラに集中する方針を表明した。「遂に来 る時が来たか!」という感じである。私と しては衝撃的なニュースであった。プロ向 けの「F6」と入門機の「FM10」だけを 残して、他は在庫がなくなり次第販売を終 了する。残る2機種も新規開発はしない方 針だそうだ。フイルムカメラは遂にこれ以 上成長することのない完全完成品となっ た。我々カメラ愛好家に永年親しまれてき た世界の名機が遂に姿を消していくのか。

もう一方のカメラ業界大手のキャノンから はそのような発表はないが、いずれ時間の 問題である。世界のデジタル一眼レフカメ ラ市場ではニコンとキャノンの2社で8 0〜90%のシェアである。フイルムカメ ラの需要が年々少なくなって、デジタルカ メラ市場が拡大して逆転していく以上、企 業としては止む終えない政策転換である。 そうなると当然フイルムメーカーもフイル ムの製造を縮小せざるを得ない。

やはりと言おうか、こうして書いているう ちに、19日にコニカミノルタが3月末 で、こちらはカメラ事業そのものから撤退 する、写真フイルム事業からも段階的に撤 退する、との発表があった。コニカもミノ ルタもかつては業界の老舗であり名門だ が、業界間競争激化で何年か前に合併し て、コニカミノルタホールディングスと なっていた。コニカのヘキサノンレンズ、 ミノルタのロッコールレンズは共に定評が あった。コニカのフイルムはあの温かみの ある肌の色にはファンが多かった。私も4 0数年前にカメラ趣味を始めたとき、ボー ナスを果たして初めて買った一眼レフカメ ラはミノルタSR−1という、当時として はニコンFに次ぐ名機であった。

世界中にフイルムカメラは相当普及してい る。日本では一家に一台は必ずあるといっ ていい。我が家にはフイルムカメラが大小 7台もある。もしフイルムが製造中止に なったらどうなるだろう。フイルムがあれ ば、まだまだ元気で活躍できるのにフイル ムがなくなれば、いきなりリストラされた ようなものだ。今年の冬の大雪で突然雪崩 に遭って生き埋めになるようなものかもし れない。

昔8mmカメラが流行した時があった。今 から30数年前、子供が生まれた時、フジ カシングルエイトという流行の8mmカメ ラを買って子供の成長記録を撮っては、 夜、夕食が終ってから部屋を暗くして映写 機で映写会をやって家族みんなで楽しんだ ものだ。しかし、それから10数年後に8 mmビデオに取って代わって、いつの間に か8mmフイルムが製造中止になって撮影 できなくなってしまった。当時の8mmカ メラと映写機は押入れにしまったままであ る。もったいないけど時代の流れはいかん ともしがたい。

デジタル時代になってからは、私も最近は ほとんど便利なデジタルカメラで撮ること が多い。というか、ここ2年ぐらいは100 %デジタルカメラである。フイルム代が掛 からない、ということよりも撮ってすぐに 画像が確認できる、パソコンで簡単に加工 プリントが出来て活用範囲が広い、という のが画期的である。特に時間を争うプロの 報道カメラマンにとっては、撮ってすぐに 現場から電送できるデジタルカメラのス ピードはフイルム時代の比ではない。

しかし、デジタル時代は便利になったけれ ど、楽しみがどんどんなくなっていくよう な気がする。フイルム時代は、どんな写真 が撮れているのか現像が出来るのが楽しみ であった。自分でプリントして現像する と、薬品の中から段々浮き出てくる写真に ワクワクしたものだ。昔は、写真の構図 云々より以前に、シャッタースピードと絞 りを自分で決めてセットしなければならな かった。ピントも自分の目で確かめなけれ ばならなかった。写真を撮るという行為そ のものが、何でも自動化してしまった現在 にはない満足感があった。

そういえば若い頃、夜中に部屋を暗くし て、定着液の、あのお酢のような臭いを嗅 ぎながらフイルム現像や焼付けを夢中で やった思い出が懐かしい。夢中でやってい たら、いつの間にか外が白々と明るくなっ てきたことも何度かあったりしたものだ。 今も当時の現像の道具や引伸機が押入れの 片隅にしまってある。現像剤も印画紙も 残っている。とっくに賞味期限?は切れて いるはずなのに。いつかまたやってみよう かという思いがあって捨てられない。

元気で活躍している時は何とも思わないの に、いざ、なくなるとなると思うと、フイ ルムカメラがいとおしいくなって来るから 不思議である。フイルムが完全になくなら ないうちに、もう一度フイルムで写真を 撮ってみたくなった。デジタルカメラが進 歩したといっても、写真の醍醐味、本当の 美しさや諧調、写真の味はフイルムカメラ には敵わないと思っている。本物はいつま でも大切にしたいものである。(2006・1・29)

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