アンドレの「デジタルつれづれ草」77段

“葉っぱのちから”


赤黄緑と彩り美しい街路樹のナンキンハゼ の紅葉(Photo shopで加工) (秋の紅葉の時は、みんな葉っぱに関心を 持ってくれる)

私たちの緑の地球には、人間を含めて様ざ まな動物、植物、微生物が暮らしている。 その全ての暮らしになくてはならない有機 物(養分)を、植物は太陽から降り注ぐ光 りを利用して作り出している。その働きが 光合成である。水の中では植物プランクト ンや藻や水草が、陸では緑の植物たちが光 合成の担い手である。その植物の光合成を 担っているのが葉っぱということだ。

葉は、枝や幹や根に助けられて働いてい る。森の中では幹や枝が陽の当たる高い位 置に掲げてくれるおかげで、葉は光合成に 必要な光りを得ることができる。土から光 合成の材料として欠かせない水やミネラル を吸収するのは根である。葉が作り出した 有機物は、更に葉を増やしたり、花を咲か せたり、実を実らせるために使われる。根 や茎の蓄えも、動物たちやそれを腐らせる 微生物たちが生きるになくてはならない栄 養を提供する。

葉の役割は、その命が尽きて枯葉になって も失われることはない。枯葉を餌にする動 物もあれば、落ち葉を腐らせることで生活 の糧を得る微生物もいる。朽ちた葉が川や 海に与える養分は、そこで生きる生き物の 暮らしになくてはならないものなのであ る。緑の葉っぱは、この地球のあらゆる場 所に、生き物にとっての食糧庫が常に満た されるように働き続けている。そのおかげ で、地上のあらゆる生命の暮らしが成り 立っているのである。

葉が有機物を作るのに必要な材料の内、二 酸化炭素は空気中にいくらでも存在する。 それが不足することはめったにない。それ に対して、光りや水やミネラルは不足しが ちである。だから、これらの資源をめぐっ て植物間の競争が起こる。光りを吸収し て、そのエネルギーを有機物に貯める植物 の作用は、植物自身の成長や繁殖に必要な エネルギーや有機物を得るためになくては ならないものだが、それだけではなく、そ れなくしては、有機物を食べる昆虫や動物 も、有機物を無機物に分解するカビやキノ コも、すなわち生態系の全ての生物の生活 が成り立たない。

けれども植物にとって、十分な光りを得る ことはそれほど容易なことではない。光り の源である太陽から届く光りは、地上では 常に上からやって来る。植物が成長して葉 の層が発達すると、つまり葉が繁ってくる と、その下は暗くなり、植物の適さない場 所になってしまう。適当な温度、水分、そ してミネラルなどの肥料分に恵まれ、植物 に適した条件が整っているところほど、光 りを奪い合う競争が激しくなるのだ。

植物たちは、その問題をあの手、この手で 解決しては、少しでも競争の少ないタイミ ングや場所を選んだり、正面から競争に挑 んだり、実に様ざまである。光りをめぐっ て生々堂々と戦うには、葉は少しでも高く 掲げ、根は地下に広く張りめぐらせなけれ ばならない。

稀には1枚か2枚の葉で暮らす植物もある が、多くの植物はいくつもの葉と枝を持っ ている。新しく作られる葉は、他の葉の陰 にならないような位置に置かれる。そうで ないとせっかく葉を作っても光を十分得る ことができず無駄になってしまうからだ。 葉の茎へのつき方は2枚の葉が向き合って 付くもの、互い違いに付くもの、放射線状 に付くものなど様ざまである。

つい植物というと華やかな花に目がいって しまうが、葉っぱの姿もいろいろな形が あって美しいものである。葉っぱの茎に付 いている位置にも、植物によってルールが 違っていて、観察すると面白い。遅ればせ ながら今年も紅葉の美しい季節になった。 花ばかりではなく、たまには視点を変えて 葉っぱに興味を持ってみると新しい発見が あるかもしれない。そして葉っぱの働きは 地球上の生物の生活にはなくてはならない 存在だということも忘れてはいけない。(2005・11・11)

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