アンドレの「デジタルつれづれ草」66段

“路傍にたたずむ古い標石「水準点」をご 存知か?”

水準点
犀が崖前の水準点(夏目次郎左衛門吉信の 碑の横)

「水準点」とは、土地の標高の基準となる 標識のことである。全国の主要な道路沿い に、およそ2キロメートルおきに設置さ れ、国土地理院発行の地形図には標高数字 と共に必ず記載されている。全国に2万基 以上もあり、ごくありふれた存在なのだが 測量関係者や地理愛好家以外はおそらく気 にも留めないものである。

水準点とはその重要度によって、いくつか の等級に分かれている。国土地理院の資料 では、姫街道の沿線に点在する水準点はど れも「一等」。つまり姫街道は測量上重要 な道なのだ。中でも三ヶ日町の東名三ケ日 インター近くの大谷集落の外れにある水準 点は「基準水準点」と呼ばれ、特に重要な 水準点で、全国に83基しかない。ここの 水準点は石柱と鉄棒の囲いの中に、標石が 筍の如く地中から顔を出している。刻まれ た文字は「水準點」と旧字体。傍らには 「この標石を壊すと法律により処分される 云々、陸地測量部」と注意書きした銅版も ある。なかなか物々しい。

陸地測量部とは、戦前まで日本の測量事業 を統括していた参謀本部陸地測量部のこと で、国土地理院の前身になる。水準点が設 置されたのは明治時代の中頃で、資料によ れば大谷の設置は昭和6年である。 ・・・・などと、以上の「水準点」につい ての説明が、ある雑誌に載っていた。それ までは水準点などという存在すら知らな かった。しかし、知ってしまった以上、身 近な姫街道沿いにあるのなら確認しない訳 にはいかなくなった。近くでは犀が崖のバ ス停の近くにあると言う。6月のある日の 4時半ごろ、用事で出かけた帰りに寄って みた。犀が崖資料館の駐車場に車を止め て、付近を捜してみた。周りを歩いてみた がよく分からない。犀が崖資料館の館長さ んに聞いてみた。

さすが館長さんは水準点のことを知ってい て場所を教えてくれた。「水準点のことを 聞かれたのは初めてです」と言った。測量 の専門家か、よっぽどの変わり者以外に水 準点など尋ねる人は恐らくいないに違いな い。もう資料館も5時の閉館時間に近かっ たが、余り訪れる人もいないのか、館長さんも 退屈しのぎに「ビデオでも見ていきますか ?」と言ってくれた。教えてもらった弱み もあり、「じゃあ、お願いします」と言っ て、犀が崖の歴史を講談風に語った10分 ほどのビデオを1人で特等席、貸切で見 た。

犀が崖資料館を訪ねたのも初めてであっ た。自宅から近いのに意外と来ていない。 ビデオを見てから、直ぐ筋向いの「水準 点」を見に行った。「なるほど、これが水 準点か?」。4つの丸石に囲まれたコンク リートの標石である。別に何の変哲もない が、確認できて満足して館長にお礼を言っ て帰ってきた。この日はことのほか蒸し暑 くて、風呂上りのビールが上手かった。姫 街道沿いにはほかに、気賀本陣公園前、三 ケ日町宇志、本坂峠上り口、などにもある という。そちらへ行った折に探してみよう と思う。今日はまた一つ新しい知識が増え て利口になりました。(2005・7・1)

「デジタルつれづれ草」トップ