アンドレの「デジタルつれづれ草」63段

“今更だけど「アクトシティ物語」”

アクトシティ

JR浜松駅前に、ベージュ色の一際高い ノッポビルを持つアクトシティが誕生して から既に10年以上が経過しているのに、 今更の感もあるが、通勤で毎朝夕、真近に アクトタワーを見上げてていたら急に興味 が湧いきて、アクトシティについてもっと 詳しく知りたくなった。興味が湧いてくる と、いつもの悪い癖が出て、徹底的に知り たくなった。3月頃からデジカメをカバン に入れて通勤の行き帰りに写真の取材、図 書館でアクトに関する本を探して勉強を重 ねてきた。

アクト中ホールの舞台にも、音楽の演奏会 で既に6〜7回立たせてもらっていたり、 音楽工房ホールには今でも3ヶ月に1度は 演奏会の鑑賞に行ったり所属団体の例会が あったりで、結構アクトとは縁が深いはず なのに、アクトシティ建設までの歴史背景 や計画意図、設計意図、見どころなど、意 外と知らないことばかりであった。

意外といえば、今回の取材で、私は初めて 屋上庭園を訪れた。お年寄りや障害者にも 配慮した、緩やかなスロープを上って屋上 庭園まで行くことが出来る。様ざまな彫刻 があり、緑豊かな、こんな素晴しい屋上庭 園があったのかと正直ビックリした。「あ あ!ここがショパンの丘か!」、しばらく カメラを置いてベンチに座ってみた。こん な素晴しい屋上庭園があるのに、意外とこ こを訪れる市民が少ない。ウィークデイの お昼休みには近くのサラリーマンがくるの か知れないが、それにしても少し勿体無い 気もした。

バブルの絶頂期に建設が始まり、バブルが はじけてからオープンという、大変な苦労 があったであろうことは想像に硬くない。 当時、箱物行政という批判もあったことは 承知している。オープン後の運営が大変だ ということも聞いている。アクトシティの 歴史背景や計画意図を正しく理解しないで 表面だけで批判することは簡単である。し かし、今回の勉強で表面だけを見て、物事 を判断してはいけないことを改めて学ん だ。円筒形を上から見たら確かに丸であ る。しかし真横から見たら四角に見える。 上から見て、横から見て、左右からも、斜 めからも見ないとほんとの姿は見えない。

縁あって、当時の市のトップの方から直接 お話を聞く機会があった。アクトの市の施 設の建設費664億円は、アクトタワー建 設用地を民間(第一生命、三菱地所)に売 却した資金567億円と利息で賄ってし まったということも初めて知った。バブル の絶頂期という、強運の功罪であった。ま た、1千数百億円というビックプロジェク トには、市の幹部担当者には業者からの誘 惑が付き物である。しかし、「コーヒー1 杯の誘惑にも絶対乗ってはいけない」と、 厳しく部下に言い続けてきた、と当時の話 をしてくださった。当然とは言え、尊敬す べき姿勢である。

これまで物づくりしか出来なかった浜松 が、これからは文化も育てていこうという 発想である。楽器生産日本一から、音楽文 化都市日本一に変身しようとする姿勢は大 いに賛成である。文化事業は最も効率の悪 い、時間の掛かる仕事である。目指すのは 音楽だけではないが、花が咲くまでには少 なくとも50年、いや、100年は掛かる であろう。しかし、これからは文化も育て ていかないと豊かな浜松市の発展は望めな い。時あたかも、今年は平成大合併の年、 浜松市も政令指定都市へと大きな変革の年 を迎えている。

アクトシティは文化の発信基地としては最 適な施設を市民に提供してくれた。箱物の ハードが先行してソフトがついていける か、という批判もあるが、中途半端なのは もっといけない。物事は形から入る、とい うことも時には必要な気がする。行政だけ ではとても出来ない事業である。市民みん なが努力して、アクトシティを大いに活用 して、「文化都市浜松」を築き上げて行き たいものである。

少しでもみなさんにアクトシティの本当の 姿を知っていただければと思って、今回の 勉強の成果を私のホームページに特集とし て組んでみました。自分としては結構力が 入ってしまった作品です。よろしかったら ご覧ください。(2005・6・4)

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