アンドレの「デジタルつれづれ草」57段

“「おいてけぼり」にされないように”

おいてけぼり

昔、釣りをすると、池の中から「置いて けー!」の声が聞こえて、釣った魚を全部池に 返すまで声が止まなかったので、「置いて け堀」、と呼ばれた不思議な池が江戸に あったそうだ。 「おいてけぼり」が「おいてきぼり」の語 源になったとか。「おいてきぼり」は置き 去りにする意味にも使われる。 いまや情報分野(IT)の技術革新は猛ス ピードで進んでいる。パソコンやインター ネットが使える人は利便を享受できるが、 そうでない人はどんどん置いていかれる。 とても我々シニアにはこのスピードにはつ いていけない。

いよいよ始まった愛知万博 では、初めてインターネットを使った観覧 予約システムが導入された。1日の収容人 員の2割をインターネットで事前予約を受 け付けるシステムである。人気館に行列を 作らない為だが、パソコンを使えないお年 寄りは、このサービスを受けられない。や はり行列に並ばざるを得ない。お年寄りか ら「不公平だ」の声が出るのは当然であ る。

もっとも、このシステムは、主催者側の不 慣れもあって、開幕2日目から1週間ほど 使えなくなるなど、トラブル続きである。 最先端技術も使いこなすまでには可なりの 熟練が必要ではある。弁当の持ち込み禁止 も納得いかなかったが、小泉総理の鶴の一 声で解禁したり、盛況なのは一部人気企業 館だけ、市民参加のパビリオンは閑散とし ているなど、様々なトラブル、問題が続出 である。私も浜名湖花博へは12回行った けれど、今のところ愛知万博は積極的に行 きたいという気持ちがしない。友達に聞い ても、みんなしばらく様子を見てからとい う人ばかりだ。

とは言え、今や超話題のライブドアの堀江 社長は、10年後には今のテレビはなくな る、と予言している。今日の情報技術革新 のスピードから考えると、テレビの姿も可 なり変化することは間違いない。急速な携 帯電話の普及で街の公衆電話も段々少なく なってきた。若者の間では、今までの固定 電話は不用な物になりつつある。街ではお じさんもおばさんも、携帯電話を「ピコ! ピコ!」やっている。携帯電話でテレビが 見られる時代だ。数年したら一般家庭でもテ レビをインターネットで見る時代が来るの は間違いない。

最近「ユビキタス」などと言う、訳の分か らない言葉を良く目にする。ユビキタス (Ubiquitous)とは、ラテン語 で「いたるところに偏在する」という意味 だそうだ。今やブロードバンド時代。いつ でもどこでも欲しい情報が手に入る「高度 情報通信社会の理想」実現の為のツールと いう概念である。 別の言い方をすれば「人がどこに移動して も、利用できるコンピュータの環境は同じ」 を実現するのがユビキタス・コンピュー ティングの概念である。もっと分かり易く 言えば、家電や電話、時計などがネット ワークで結ばれ、車や電車の中からでもイ ンターネットにアクセスでき、外出中に自 宅の洗濯機に指示したり、お風呂を沸かし たりしておくことが出来る。そんな社会が 「ユビキタス社会」だ。

今はまだ「私は年寄りだからパソコンもイ ンターネットも出来ない」と言っていられ るが、10年後になったら、そんな甘えた 考えは通用しない時代になる。嫌だと言っ ても、時代の流れには逆らえない。そんな お年寄りは「おいてきぼり」にされるだけ である。そうならないために、自分も毎日 パソコンの勉強をしている。シニアの友達 にもパソコンを自由に操作できるように教 えてあげたいものである。時代に「おいて きぼり」にされないように。(2005・4・2)

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