アンドレの「デジタルつれづれ草」46段

“気になる物件”

気になる物件

街を歩いていると時々気になる物件に出会 う。この物件も、以前から「紅葉の時期に なったら是非写真に撮ろう」と、いつも 思っていたのに、ついその時期を逃してし まっていた。今年こそは、と時々この前を 通っては、紅葉の時期を伺っていた。そし て遂にそのチャンスをものにした。11月 21日の午後である。ご存知、肴町にある 老舗の酒屋さんの建物である。以前からこ の建物の古くて渋い感じがとても好きで、 いつ取り壊されてしまうのかとハラハラし ていたが、何とか間に合った。私は最近こ ういう古いものにどうも弱い、年のせいか ?。

「カメラ散歩」と「路上観察」を趣味とす る私は、時間が空くとカメラをポケットに 入れて“カメラ散歩”によく出かける。昔 は重い一眼レフカメラを肩に歩いたが、最 近はデジタルカメラという、すこぶるコン パクトで高性能なカメラが出現して、今で は専らデジカメのお世話になることが多 い。 昔は写真は「真実を写す」と言った。ある がままが写るからである。しかし、デジタ ル時代になって様子が一変してしまった。 この写真も嘘が一杯である。左側に隣の建 物がくっついて建っているが、うるさいの で消してしまった。空もこんなに青くな い。蔦の紅葉も実物はこんなに赤くない。 自分で言うのも可笑しいが、最近の写真は 信用してはいけない。修正が自由自在に出 来てしまうのだ。

デジタル時代になって、写真がいとも簡単 に修正加工することが出来てしまう。失敗 写真もたちどころに傑作に生まれ変わる。 昔我々は傑作写真を撮るために可なり苦労 したものだ。こんなに簡単に思い通りの写 真が出来てしまって良いのだろうか。・・ ・・いささかやっている自分でさえ疑問に 思うことがある。 しかし、良い素材がないと、良い料理が出 来ないのと同じで、素材の悪い写真を、い くら修整加工しても、所詮駄作で、傑作写 真にはならない。現代はカメラのシャッ ターを押せば、猿でも写真は写る。しか し、美しい写真、味の或る写真、感動する 写真を撮る為には、良い素材探し、素材の 見極めが肝心で、そう簡単に撮れるものでは ない。(2004・11・27)

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