アンドレの「デジタルつれづれ草」42段

“地球上で一番長く生き続ける生き物は?”

ゴキブリゴキブリゴキブリ

生き物の大先輩:ゴキブリ。日本でよく見 られる種類、左からワモンゴキブリ、チャ バネゴキブリ、トウヨウゴキブリ。


地球最古の昆虫は、3億年も繁栄してきた サバイバルの天才。水がなくても酸素がな くても数時間はへっちゃら。しっぽの敏感 なセンサーで危険を察知するや、逃げ出す 速度は時速320キロ。メスは1回のHで 精子をまとめてもらうと、あとはオスがい なくても一生安産、子沢山。何でも美味し く食べるけど、なぜかキュウリだけは嫌い だそうだ。


ゴキブリの化石は石炭紀の地層から見つ かっている。紀元前およそ3億2,500万年前 にはもう繁栄していた。恐竜より1億5,000 万年前、人類より3億年も前からこの地球 上に住んでいるのだ。そして3億5,000万 年の時を超えた現代も同じ姿をしたゴキブ リが、地球上のいたるところ、あらゆる環 境下に行き続けている。 6本の脚、キチン質という硬い物質から出 来た外皮、下向きに曲がって殻の下に上手 く納まった頭、前向きに突き出た一対の触 角、横から見ると、いつもお辞儀をしてい るような格好。殻(外骨格)がロウを塗っ たようにツルツルしていて平たいから、 ちょっとした隙間にもぐり込める。その上 食べ物を選ばない雑食性で何でも食べる。 雑食性という何でも食べる種類の動物は多 いけど、ゴキブリの右に出るものは、まず いない。人間なら飢え死にしかかっても決 して手を出さないものまで喜んで食べる。 糊、糞便、髪の毛、腐った葉っぱ、紙、仲 間のゴキブリ、人間の死体もである。それ どころか眠っている人間の皮膚を食べられ る事もある。

つぶした時にブチュッと出てくる白っぽい 液体は脂肪である。硬い殻とデリケートな 内臓の間のベトベトした厚い層で、循環器 や神経といった器官をすっぽり包んでい る。正式な名称は「脂肪体」といって、新 陳代謝の殆どをまかなっている。その上貴 重な窒素や栄養を蓄えて置けるので、食べ 物が不足してくると、それを使って生きの びる。台所でよく見かけるチャバネゴキブリは、 水さえあれば何も食べずに45日間生き る。食べ物ばかりか、水もなく、飲まず食 わずで2週間以上は生きる。ゴキブリの体 つきはサバイバルに最適で、何処に暮らし ていようと、抜群のサバイバル能力を発 揮。生き物を創造した神に一番いい設計を 描いてもらえたゴキブリは、間違いなくこ の地球上の進化の頂点にいる、進化論の優 等生だ。

ゴキブリの生き方は何処をとっても人間よ りずっと効率的だ。オスゴキブリの体内に は精子の入った「精包」という袋ができ て、この中に精子を入れてメスに渡す事が 出来る。一度交尾をして精包をもらったメ スは、その中から必要な時に少しずつ使う ので、死ぬまで精子に困らない。 ゴキブリの卵は「卵鞘(らんしょう)」と 呼ばれるファスナーのような盛り上りのつ いた黒っぽい小さな入れ物に、受精卵が20 個の卵が2列、合わせて40個の卵が並んで いる。卵から孵る日数は温度により違う が、およそ1ヶ月前後だ。羽化した幼虫は 6ヵ月の間に6回脱皮して成虫になる。 不幸にして脚をなくしてしまったゴキブリ は、脱皮の時に、もう一度新しい脚を取り 戻す事が出来る。もしも敵に見つかっても 脚や触角を捨てて逃げる。自分は次の脱皮 で又、新しい脚や触角をもらう事が出来る のだ。

ゴキブリを見つけてつぶそうと思って新聞 を振り上げようと思った頃には、ゴキブリ はもう安全な場所に逃げ込んでいる。肛門 のそばにある「尾角」という感覚器で人の 気配を感知すると、ゴキブリの走る速さ は、1秒間に体長の50倍、人間に換算する と、時速320キロだ。 ゴキブリは出来るだけ多くの仲間と、出来 るだけ狭いスペースに、ギッシリ集まって 暮らすのが好きだ。詰め込まれた仲間が多 いほど、押し込まれた場所が狭いほど安全 に感じるらしい。日本で一番ポピュラーな チャバネゴキブリは、1ミリ半から1セン チ3ミリ程度の隙間しかない場所に好んで 住み着き、6ミリくらいが一番しっくり来 るようだ。 普通、ゴキブリは壁の裏や台所の棚の隙 間、冷蔵庫の下、トイレや風呂場に通じる パイプの回りなど、人間と同じ空間で寝た り起きたりしている。殆どは生まれてから 死ぬまで人間の目に触れないで、生まれ、 生き、死んでいく。

ゴキブリは夜行性で、昼間は寝ているか、 隠れ処でダラダラ過ごしている。もしも昼 間、ゴキブリが外に出てウロウロしている のを見たら、住処が仲間で溢れかえってし まい、仕方なく明るい場所に現れたと見て いい。その場合はゴキブリ汚染は相当深刻 な状態まで進んでいる事になる。 世界中のゴキブリの種類は1万ほど、その 内人間の近くで暮らすのはほんの一握りの 100種ほど、残りの殆どの種類は自然界 に暮らす野生種で、人間の目に触れること は殆どない。 ゴキブリほど嫌われる生き物もない。ゴキ ブリは取るに足らないものの代名詞で、最 も不快な生き物だ。人間の世界でも、そん なやつらを「ゴキブリ野郎」などと呼んだ りする。 しかし、実に多くの研究者が毎日ゴキブリ の研究をして、しっかり稼いでいる。主に は殺虫剤メーカーだ。ゴキブリの研究で ノーベル賞候補に挙がった研究者もいるほ どだ。ゴキブリを侮ってはいけない。

ゴキブリを根こそぎやっつけてやろうと研 究者は毎日躍起になっているだろうが、そ うはいかない。殺虫剤の毒性を解毒分解す る能力がゴキブリの体内に発達して、この 抵抗力が遺伝子に刻まれ、次世代に引き継 がれていくのだ。研究者はもっと毒性の強 い殺虫剤を作らないといけない。しかし、 そんな毒性の強い薬が人間に害がない訳が ない。 もし、ゴキブリがこの地球上から消滅する ような事があったら、その前にとっくに人 間がこの地球上から絶滅している筈であ る。(2004・10・29)

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