アンドレの「デジタルつれづれ草」27段

“定年後を油彩画に取り組む素晴らしいシニア人生”


犬塚さんの代表作品:第60回創元展 (2001)伯賞「尻屋埼初冬」

知人のNさんから、「佐鳴台に素晴しい油 彩画を描いている方がいる」と紹介され て、先日、佐鳴台5丁目にお住まいの、犬 塚一雄さんのお宅を訪問した。休暇を取っ た日の朝、突然電話を入れて、「突然です が、宜しかったら今朝お邪魔をしたい」 と、申し入れたら、Nさんから既に連絡が 行っていたので、快く引き受けて下さっ た。 玄関先まで出迎えてくれた犬塚さんは、と てもシニアには見えない若々しさで、一瞬 家を間違えたのかと思ったほどでした。や はり、何かに打ち込んでいる人は若く見え るものである。玄関に入ると、ドデン!と 大きな絵が置いてあった。とても住宅の中 には飾れないような幅2メートル以上もあ る大きな絵である。 応接室に案内されたら、既に何枚かの作品 が用意されてあった。奥さんがお茶を出し て下さった。犬塚さんも奥さんも若々しく て気さくな良い方である。若く見える犬塚 さんが今年古希を迎えると聞いて、2度 ビックリしてしまった。

犬塚さんが絵を描き始めたのは60歳に なってからだという。月並みに、定年後に 何を始めようかといろいろ迷ったそうだ。 木彫りのクラフト制作をやってみたり、釣 りも考えたけれど、年齢を重ねても出来る ものを、と考えて、本格的に描いたことは 無いけれど若い時から好きだった絵を描く ことにした。絵を描くのなら基本からしっ かり勉強しようと、服部譲司先生に師事し て油彩画を勉強して、早くも今年で10 年、努力と才能が開花して、数々の賞を受 賞するほどの素晴しい活躍ぶりである。 犬塚さんの絵は、一貫して「岬と灯台」の テーマが多い。「どうしてですか?」と尋 ねたら、若い頃よく行った伊良湖岬の思い 出があったり、日本は島国で岬が多い事、 岬には必ず灯台があって、そんな灯台も今 は殆ど無人化されて、時代を感じている 事、余り他の人が描いていない事・・・・ などの理由で自分のテーマにしていると言 う。

岬は全て地の果てである。北海道の地の果 てにも何度も足を運んでは数々の岬と灯台 を描いている。現地で葉書大のスケッチと 写真を撮ってきて、自宅に帰って作品の制 作に取り掛かる。大きな作品は3ヶ月から 6ヵ月掛けて制作する。 私も絵は好きなほうなので2人で絵につい ての思いや、うん蓄を夢中で語り合ってい る内にお昼近くになってしまった。作品の 何点かをカメラに収めさせていただいてこ の日は失礼した。なお、今年は古希を迎え ての記念に、これまで四季折々日本各地の 岬を巡り描いた「岬と灯台」の油彩画を展 示し個展を開催するとのことである。絵に ご興味のある方で時間のある方は是非足を 運んであげて下さい。 帰りしなに、「折角の素晴しい作品の数々 を部屋の片隅に積んで置くだけでは勿体無 いから、病院のロビーや公共施設などに 飾ってもらっては如何ですか?」と問いか けたら、「是非無料でお貸ししますから、 飾ってください」と、答えて下さった。ア ンドレメイトの皆さんの中で、飾ってくだ さる所を知っていたら是非紹介してくださ い。(2004・7・16)


犬塚さんは、平成17年12月5日、ご病気により永眠されました。心よりご冥福をお祈り申し上げます。


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