アンドレの「デジタルつれづれ草」23段

“初めての「ホタルの里」訪問記”

ホタルの里

私の住んでいる団地と隣の団地の間にホタ ルが住むという谷間がある。私が今の弥生 団地に住み始めて35年、愛犬の散歩でホ タルの里の入口の前は良く通るのに、谷を 降りたのは今回が初めてである。昔からの 地元の世話好きな農家の方がボランティア で下草を刈ったり、通路を整備したりし て、安心してホタル鑑賞が出来るように整 備してくれている。 6月1日、丁度この日の昼間、世話好きな 農家のご主人と奥さんに公民館でお会いし て、「昨日からホタルが出始めたから是非 いらっしゃい」と言われたのだ。夕方に なって、20メートルほどの谷を下ってい くと、一瞬別世界へ来たような錯覚に落ち た。周囲を深い木々に囲まれて、谷の底は 一面平らな湿地帯で、何処から湧き出てい るのか、清流がサラサラと流れている。正 に「ホタルの里」の世界である。

団地の真ん中に、こんな別世界があるなん て、信じられないような光景である。聞こ えてくるのは、「サラサラ」と流れる小川 のせせらぎ、「ゲロゲロ」と鳴くカエルの 鳴き声、時々「ジー、ジー」と言う何の虫 か分からない鳴き声、時々遠くで啼く犬の 声、後は静寂そのものである。・・・・ と、夢心地でいたら、自衛隊のヘリコプ ターの「バタバタ」という大きなエンジン の音が聞こえてきて、折角の夢心地が覚め てしまった。 最近この「ホタルの里」のすぐ隣に、また 20数戸の団地の造成が始まった。何とか この「ホタルの里」の谷間だけは何時まで も残して欲しいものである。最近はシーズ ンになると団体でホタルを見に来るとい う。今時のこんな貴重な自然を皆に見ても らいたいと思う反面、余り大勢では来て欲 しくないという気持ちがして、自然を愛す る者としては複雑な気持ちである。

さて、肝心のホタルであるが、初めて訪れ たこの日の夕方は、うっかり懐中電灯を忘 れて来てしまったので、暗闇になると谷底 から帰って来れなくなるので、早めに切り 上げてきた為、ホタルを確認する事が出来 なかった。6月11日に地元の子ども達を 呼んでのホタル鑑賞会が計画されたが、そ の日は雨で12日に行われたようだ。 日を改めて、14日の夜8時頃、今度は懐中 電灯を持ってホタルの里に行ってみた。 真っ暗闇の谷を少し降りていくと、 「キャー!、キャー!」と、子ども達の歓 声が聞こえてきた。下まで降りたら、暗闇 の中から「こんばんは!」と声がして、大 人2人と、子どもが6〜7人ほど来ていた。 「こんばんは!ホタルはいる?」と聞いたら、「うん、いるよ」と、答えが返っ てきた。 暗闇の中を目を凝らして見たら、木の茂み の陰で、「ピカッ、ピカッ」とあちこちで 柔らかい光りの点滅が見えてきた。数百匹 とはいかないけれど、20〜30匹はいたよう に見えました。

久しぶりに見る幻想的なホ タルの光りの競演に酔いしれて、5〜6分 ほどして帰ってきました。子ども達に「さ よなら」と言ったら「おやすみなさい」と 返事が返ってきました。帰りの道すがら、 この間の長崎県で起きた様な事件は、この 子ども達には心配ないな、と思ったりしま した。昔私が子供の頃は、ホタルを捕まえては、 夜、蚊帳の中に入れてホタルの光るのを見 ながら寝た記憶があるが、今の子ども にとっては夢物語のような話である。(2004・6・18)

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