シリーズ“趣味に生きる”

「佐鳴湖公園ミニ鉄道」を開設した小倉慶久さん

"蒸気機関車(SL)は電車やディーゼルカーと違って「命」が宿った存在。子どもたちに魅力を長く伝えていきたい!"・・・「浜松ミニSLラウンドハウス」会長兼事務局長:小倉慶久

2007年5月下旬、長年の悲願であった「佐鳴湖公園ミニ鉄道」を開設した、中区富塚町にお住まいの小倉慶久(よしひさ)さんをご紹介します。今や時の人として新聞や雑誌の取材に追われてお忙しい小倉さんですが、8月の真夏の暑い日に「佐鳴湖公園ミニ鉄道」敷地内で快く取材に応じてくださいました。

小倉さんは、子供のころ鉄道線路の近くにお住まいだったので、毎日、行き来する列車を見て育ちました。勿論当時はまだSLが健在で、列車の入れ替え作業を時間も忘れて見入っていました。息子さんが8歳の時にNゲージ(鉄道模型)を買ってあげたのを機会に、もともと鉄道が好きだった小倉さん自身が鉄道模型にのめりこんでいきました。作っては壊し、作っては壊して、いつの間にか鉄道模型も2,500車両を超える数になってしまったとか。そんな小倉さんの自宅の玄関先には実物の鉄道の信号機が天を衝いて立っていてビックリする。そんな趣味が縁で25年ほど前に同じ鉄道マニアの仲間と知り合いライブスチーム(模型蒸気機関車)の運転に立ち会うようになりました。地域の催事やボランティア活動で運転を重ねるうちに、自分も模型蒸気機関車を製作したくなり、はじめは中古のスーパー6型テンダー機関車やEB10型風電気機関車を購入改造したり、乗用台車を作っていました。今はC58−200型蒸気機関車に取組み、ほぼ完成、現在700型ドクターイエローを製作中でこれも完成間近かです。いずれC11 190型蒸気機関車を製作したいと夢は果てしなく続き、終わりのない世界のようです。

地域の催事やイベントで機関車を展示したり子供たちを乗せたりしているうちに、常設の鉄道公園を造る構想は25年前からずっと会員のみんなが持ち続けていた夢でした。その間都田町や遠州浜方面など何箇所か候補地の話があったり消えたり紆余曲折がありました。佐鳴湖公園隣接地に浜松市が民間から借り受けている公園敷地が利用されないままになっているとの情報を得ました。浜松市との熱心な交渉の末、整備費を自分たちで負担することを条件に借受できることになりました。知人の土建屋さんに土砂を入れてもらったり、草を取ったり、会員たちが休日を返上して敷地を整備し線路を設置して、長年の悲願がかなって2007年5月末にオープンしました。

オープン間もなく地元の新聞や鉄道模型マニアの雑誌などの取材を受けるようになり、多くの市民の関心が集まりました。開設以来「機関車に乗れるのはいつですか?」との問い合わせが多いそうです。開設しても地盤がまだ安定しないため、今のところ定期的に運転できるの日が決められないのが悩みだといいます。大雨が降れば土砂が両側の斜面に流れ落ちたりします。線路が少しでも沈んだり傾けば運転できません。草もたくさん生えます。最近は奥さんも草取りを手伝ってくださるそうです。「家族の協力なくしてはできません」と語ってくださいました。

2007年8月19日(日曜日)、オープンして何回目かの「SL乗車会」を開催するというので会場を訪問しました。10時からの開催というので9時半ごろ会場に着くと、すでにスタッフがSLの釜に石炭を入れて蒸気を沸かしていました。蒸気の圧力が基準に達する時間はその日の気候により毎日違うそうです。数組の家族連れが集まっていました。10時になっていよいよSLの準備も整って乗車会が始まりました。先ほどより更に子供の数が増えてきました。聞くと遠く静岡市や三島市からも訪れているそうです。大人の鉄道マニアも岡崎市や名古屋市から駆け付けているそうです。大人も子供も年齢に関係なく楽しめるのが鉄道趣味の良いところです。一般的にミニ鉄道の乗車会というと単線をクルクル回るだけですが、ここの設備のすごいところは複雑な複線を中央コントロールセンターでポイント切り替えができるところです。この設備にはさすがの鉄道マニアもビックリしていました。小倉さんの自慢の設備です。

お昼近くになっても大勢の家族連れが何回も何回もSLに乗って楽しんでいました。SLもいろいろな種類の機関車が走っていました。電動の新幹線も走っていました。出来立てのSLの試乗もしていました。SLに乗っている子供を撮ろうとカメラで追いかけるお母さん、お父さん、おじいちゃん、みんな楽しそうでした。小倉さんはテキパキとスタッフの指示やポイントの切り変え、子供が怪我をしないかと大忙しで駆け回っていました。やがて正午のお休みとなり、取材を終わって会場を後にしました。午後は1時から3時まで乗車会は続きます。夢を実現した小倉さんは幸せそうないいお顔をしていました。

シリーズ“趣味に生きる”TOPへ