アンドレのフォト・エッセイ「青春日和」No.96

“75歳で初めて御殿屋台のお囃子デビュー”

何ということか、75歳にして初めて祭りの御殿屋台のお囃子の三味線で初デビューした。わが町は26年前から凧揚げに参加してきたが御殿屋台がなかった。1億円とも言われる御殿屋台を新調するのは簡単ではない。20年ほど前に自治会館建設のため1世帯7万円ほどの寄付を1000世帯以上の住民にお願いした経緯があった。少し落ち着いたところで、今度は御殿屋台の寄付を町民にお願いしようと1年間説明会を重ねて最後に住民投票したが、残念ながら否決されてしまった。少子高齢化の現代では難しい課題だ。

諦めかけていたところ、ある町内で子供が少なく、ここ数年屋台を出していない話を耳にした。早速貸し出しの相談をかけたら快く引き受けてくれたという。それからトントン拍子に話が進み2017年の祭りからデビューすることになった。御殿屋台にはお囃子隊を結成しないとできない。地元小学校の校長先生が快く児童たちにお囃子隊の募集を掛けてくれた。太鼓の児童が揃い、笛は何人か心得のある大人が集まったが、問題は三味線担当だ。私が三味線の心得があることを聞きつけた自治会の役員に説得された。私のほか女性2人、男性2人が参加し、他の町内からも女性1人が参加してくれた。祭りのお囃子の太鼓も笛も三味線も町内では初めてのことで指導者がいないため、周りの町内から指導者を招いて半年後の5月の祭り本番に向け2016年11月から毎週練習が始まった。

未経験者ばかりで半年後の本番に果たして間に合うのか心配した。しかし、太鼓の子どもたちの成長は早い。笛や三味線の大人たちも頑張った。2月の会館フェスタの日にお囃子隊の初お披露目があったが、何とか形になっていた。4月2日の祭り会所開きの日には衣装も揃い立派に披露された。4月29日には実際に屋台に上がっての練習をした。ついに5月3〜5日の祭り本番がやって来た。2階建ての彫刻も立派な見事な屋台だ。3日間晴天に恵まれ夕方5時から夜10時頃まで頑張った。3軒の初子の祝い練りにも参加した。今年は初めてなので御殿屋台の引き回しは町内だけだった。来年は市中引き回しに参加する予定だ。

この年齢で初めて3日間フルに御殿屋台のお囃子担当で参加して腰は大丈夫だろうか?疲れないだろうか?と心配したが、3交代のローテーションで心配した事態にはならず楽しく参加できた。初めての御殿屋台にふる参加して感じたことは、町内の子どもから大人まで、初めて顔を合わせる者同士が祭りという一つの目的に向かって一生懸命になれるのは何て素晴らしいことなのだろうと思う。1年に一度は勉強や仕事を忘れることも必要なんだと思う。年齢を超えた町民同士の大きな絆が生まれたような気がした。

寄付の住民投票では否決されたが、立派な御殿屋台の上で可愛らしいお化粧と衣装を着てお囃子を頑張っている子供たちの姿やワッショイ!ワッショイ!と楽しそうに引き回しをしている子供たちを見た町民たちの歓迎の笑顔にホッとした。子どもたちもスマホばかりに夢中にならないで、素晴らしい伝統文化を守る大切さも学んで欲しいものだ。(2017.5.10)

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