アンドレのフォト・エッセイ「青春日和」No.80

“疲弊した日本”

12月2日に起きた中央自動車道・笹子トンネル事故は私にとって正に寝耳に水の出来事だった。この日は朝から用事で外出して、忘年会から帰宅したのは夜10時近かった。風呂から上がってテレビのスイッチを入れて、とっさに何やら画面の様子が尋常ではないと感じた。高速道路のトンネルの1枚1トンを超す天井板が110mに亘って無数に落下し、複数の乗用車が押しつぶされて9人が亡くなった。原因は天井板の吊金具の老朽化のようだが、点検も不十分だったという。笹子トンネルは開通から35年、全国に1500本以上ある高速道路のトンネルのうち、2割以上が既に30年を経過しているという。高速道路のトンネルに天井があるとは初めて知ったが、1トンを超す板がボルトで吊っていたとはビックリした。物質は経年劣化し、いつかは寿命が来るのは誰でも知っている。 たまたま今度の事故で気づかされたが、問題は高速道路のトンネルだけではないということだ。高度成長期に盛んに建設されたこれら日本の社会インフラが一斉に老朽化する時期にきていることだ。

高速道路のトンネルだけではなく、道路の橋脚、鉄橋、上下水道管、高層ビルなど、数えたらきりがない。新幹線も開業から50年近く経過しているが、幸いこれまで大事故は発生していないが、今後も絶対事故は起こらないという保証はない。こんどの事故で分かったことは、全てがメンテナンスが十分行われているわけではないということだ。メンテナンスには莫大なお金がかかる。しかし、予算がないのでやっていませんでは済まされない。人間の命に直接かかわる大問題なのだ。

建造物だけではなく、日本の社会が一斉に疲弊している感じがする、政治も経済も社会も何もかもだ。毎年のように総理大臣が変わり、大臣に至っては数カ月で交代しているようでは国際社会から信用されない。経営戦略を誤って世界のパナソニックがシャープが巨額の赤字に苦しんでいる。技術力だけでは後進国にも勝てなくなった。若者の就職難は相変わらずで,日本の若者は将来に夢を持てない世の中になっている。20代の30%強が経済的に将来結婚できないと考えている。1億総中流と言った時代は今は昔の夢物語となり、格差社会はますます広がっている。

3年半前に、マンネリ化した自民党の政治に国民は変化を求め民主党に期待を寄せたが、結局民主党は国民の期待に応えられず、今回の総選挙で大敗して自民党が大勝利で返り咲いた結果になった。しかし、勘違いしてはいけないのは自民党が大勝利したわけではなく、期待はずれだった民主党が降ろされた結果、自民党しか選ぶ対象がなかっただけなのだ。国民の総意で自民党が選ばれた訳ではない。投票率も60%を切っている。願わくは、過去の自民党から脱皮して、真の国民のための政治をお願いしたい。経済再建、震災復興、原発問題、沖縄の基地問題、外交問題、北朝鮮拉致問題・・・等、難題は山積している。(2012・12・26)

「青春日和」トップ