アンドレのフォト・エッセイ「青春日和」No.74

“じいちゃんマーマレード”

数年前から我々の熟年男性グループで公民館で開催している「男の料理教室」がある。4月は恒例のマーマレード作りである。3年前に初めて作って孫に送ったら、「おじいちゃんのマーマレードおいちい!」と言われて好評だったので、ついその気になって早速「じいちゃんマ―マレード」をブランド名にしてラベルを作成して貼ることにした。今年も孫の喜ぶ声が聞きたくて張切って5本も作ってしまった。

ジャム類は市販で買うと結構な値段がするが、自分で作ってみると手間暇がかかって大変な事がよく分かる。このグループは講師を会員が順番でやることにしている全く素人の料理教室である。「男もいざという時に備えて簡単な料理は心得ておくべし」という趣旨で始まった。もちろん私も講師を務めた。料理はからっきしダメな私だが、テレビの料理番組を見るのは好きである。食通ではないが美味しいものを食べるのも好きである。かみさんにレシピを教わって自宅で練習して講師に臨んだ。やればできるという自信が付いた。「料理を覚えたら家でやってくださいよ」とかみさんに言われる。「いざと言う時にはやりますよ」と言って逃げている。

高齢化社会になって、最近様々な業者による食事の宅配サービスが盛んになった。需要があれば供給が栄える、当然の市場原理である。うちの団地の周辺でも近くにあったスーパーが廃業してコンビニに代わってしまった。遠くのスーパーへ買い物に行きたくても車の運転が出来なくなった高齢者にとって毎日の食事の支度は死活問題である。テレビは見なくても死なないが、食事をしないわけにはいかない。生きている限りそれが毎日続くのである。最近流行の買い物籠付きの手押し車を押して、500メートルも千メートルも離れたスーパーまで坂道を登ったり下ったりして買い物に行く高齢者を良く見かける。宅配サービスはこうした高齢者には便利には違いない。スーパーに行けば出来合いの総菜がたくさん並んでいるし、様々なお弁当も並んでいる。お金さえ出せば食べるものに困るということはない。焼き魚、煮魚、きんぴらごぼうに肉じゃがだって売っている。見た目は家庭料理と同じだ。

しかし、こうした宅配サービスやスーパーの惣菜や弁当は、最近は高齢者に配慮しているとはいえ、どうしても味付けが画一で飽いてしまい、しかも味が濃く、添加物も多く毎日出来合いと言う訳にはいかなくなる。そこで簡単なものなら男も自分で料理ぐらいできるようになっておくべきなのだ。「食べられる材料で作るんだから、味はともかく食べられないことはないだろう」「うまい下手は抜きにして、食べられればよい」と思っていた「男の料理教室」も、やっている内にだんだん欲が出てくる。グループごとに出来栄えを批評し合い競い合うようになる。どうしても人間から「欲」と「競争」を捨て去ることはできない。何とこの日は某新聞社の取材まで受けて、ワイワイ言い合いながら主役のマーマレード作りと、お昼の簡単な筍の炊き込みご飯とブロッコリーのスープを作って大いに盛り上がったのだった。(2012・4・16)

「青春日和」トップ