アンドレのフォト・エッセイ「青春日和」No.69

“びっくりしたなあ、もう!”

てんぷくトリオの三波伸介のギャグではないが、「びっくりしたなあ、もう!」である。大型台風15号が、浜松に上陸したのだ。21日午後2時頃のことだった。その後関東から東北、北海道まで日本列島を縦断していった。浜松では近年にない出来事である。雨戸をすべて閉め切ってじっとテレビの台風情報を見ていた。沖縄の南東で迷走していた台風15号は勢力を強めながら北上し始めた。今回は間違いなく静岡県の直撃は免れないコースだと覚悟はしていた。

昼少し前から風が強くなってきた。雨戸をたたく風雨の音がすごかった。御前崎では最大瞬間風速45・1メートルを観測したという。浜松上陸の午後2時前後に突然電気が消え、当然テレビの画面も消えてしまった、停電である。まさか停電が夜まで続くとは思ってもいなかった。テレビが見られないので電池式の携帯ラジオを探してスイッチを入れた。幸い電池はまだ切れていなかった。一瞬風雨がバッタリなくなって静かになった。あのときが上陸したときだったのだ。台風の目に入ると一瞬無風状態になった。台風の目がどんなものか、ポッカリ穴が開いていたか、ちゃんと見ておけばよかった。

やがて夕食時になってきたが、相変わらず停電が続いている。ご飯が炊けない。冷蔵庫にあるものをチンしたらと思ったが、当然電子レンジも使えない。仕方がないのでガスレンジでお湯を沸かして、うどんをゆでてレトルトのカレーうどんの元を温めてカレーうどんを食べた。我が家はお蔭でまだガスレンジなのでお湯が沸かせたが、近所のお宅ではオール電化にしてしまったので停電になったらお手上げ状態だったという。こんな時はオール電化も考え物だ。夕食を何とか済ませて、今度はお風呂でも入ろうと思っても、お風呂はガスだけれど電気がないとお湯が入らないのだ。トイレも最新式の水洗トイレは停電だと水が流せないという。わが家は旧式のタンク形式でよかった。照明も東日本大震災の後に買っておいた手回し充電式の携帯ラジオ付懐中電灯が役に立った。テレビも見れなければ暗くて新聞も本も読めない。薄暗い中、ただじっと携帯ラジオを聞いているだけであった。電気はもちろんラジオもない昔は、夜は何をしていたのだろうと思ってしまう。

台風が去ったのか外の風雨もだいぶ静かになってきた。夜8時半過ぎにやっと電気が回復してやれやれ、風呂に入ることができた。東京に住む子供から「台風が浜松に上陸したって大丈夫?」と携帯のメールが来た。最近は停電だと電話も使えない、携帯電話はやはり必需品なのだ。その後テレビのニュースを見ていたら、台風15号は浜松に上陸後足早に関東を通って東北を縦断、北海道に向かったという。各地で大雨と風の被害がすごかった。浜松地方でも初めて大規模な避難勧告が発令された。先の台風12号でも近畿地方に大雨による甚大な被害が出ているが、日本にとって今年は試練の年である。

翌朝家の周りの被害状況を見たが、庭の植木鉢がひっくり返って、いくつか割れている程度で済んでよかった。落ち葉や小枝が吹き溜まり状態で、掃除が大変だった。それにしても現代社会は電気がないとまったく生活ができないことが良く分かった。今さら100年前の生活に戻ることなどできないのだ。「原発は反対だ、でも電気がないと困る」。これが現実なのだ。(2011・9・22)

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