アンドレのフォト・エッセイ「青春日和」No.66

“節電時代”

まさか今の時代に電力の配給制度のような「計画停電」や「節電15%」が国を挙げて実施される時代が来るとは予想もしていなかった。「3・11」の東日本大震災から早くも3か月が過ぎても、いまだに遅々として進まない復興状況が連日テレビに映し出されている。被災地の皆さんの苦労を思うと、こちらでいつもと変わらない生活をしているのが申し訳ない気持ちになってくる。地震・津波の被害もさることながら、相変わらず福島第一原発の収拾のめどがつかず、東電も国も何とか委員会も、状況の発表が次々と変わって、国民はどれを信用していいのかよく分からない。

総理のリーダーシップが問われて野党より内閣不信任決議案が提出され、動向が注目されたが、直前の管総理の退陣表明により採決では大差で否決され、野党の思惑は外れた。もともと原発を国策として推進してきたのは自民党であり、その責任も語らぬまま、将来の展望も持たずに民主党の現政権を引きづり降ろす事しか考えない自民党にも失望した。未曽有の大災害に遭い、国難真っ只中の日本にとって、そんなことをしている場合ではないはずだ。今は党派を超えて一致団結して復興に当たるのが国の、政府の、国会議員の責任であるはずだ。不信任案は否決されても、総理の退陣時期、後継問題が後を引く。

浜岡原発は総理の要請により運転を停止した。政府は原発依存の電力政策を見直すというこの判断は正しい。今の福島原発の状況をすれば当然の結論である。そうなれば、これからの夏場の電力需要期に不足は必至で国を挙げて節電を協力してほしいということで、企業の節電対策は大変なようだが、一般家庭にも15%の節電要請が出た。気象庁の発表によれば、今年の夏の気温の予想は「平年並み」か少し高いという。しかし、この「平年並み」が曲者なのだ。平年の気温は10年ごとに見直され、今年は昨年を含んだ猛暑続きの10年の平均なので可なり平均気温が上がっているという。 わが家では昨年の夏の終わりに長年使っていた扇風機が壊れて、すぐに電気屋に買いに行ったが店頭から扇風機が1台もなくなっていて断念した経緯がある。今年5月になって店頭に並び始めてすぐに2台買いに行ってきた。今年は特に節電で扇風機はすぐに在庫がなくなると予想されている。ホームセンターでは、防災グッズはもちろん、スダレやイ草の敷物をはじめ、昭和時代の電気を使わないレトロな猛暑対策グッズがバカ売れだそうである。朝顔やゴーヤの苗もよく売れているという。窓際を緑のカーテンで遮光すればかなりの節電効果があり、朝顔の花を鑑賞したりゴーヤの料理で一石二鳥だ。

昨今の物があふれている世の中、電気も使い放題だと思っていた思い上がりを反省しなければならない時代が来た。トイレも温水シャワーでお尻を洗ってくれる。蛇口に手をかざせば水が出て、手をかざすと温風で手を乾かしてくれるのもあるが、これも電気が使われている。濡れた手はハンカチで拭けばいい話だ。今やどこの家庭にも電気製品は数えきれないほどある。最近風呂場をリフォームして温風乾燥機を付けたが、真冬の寒さや梅雨の時期は便利だが電気をかなり食う。しかし、これは年寄りが冬場脳卒中で倒れないための必需品だ。わが家にはないが最近は食器洗い機のあるお宅も多いだろう。テレビの裏やパソコン周りのコンセントも配線だらけである。つまり最近のほとんどの機材が電気を使う製品である。

化石燃料は地球温暖化問題、資源枯渇問題をかかえて使用を控え、できるだけクリーンなエネルギーをと推進した原発だが、ひとたび事故が起きると放射線というやっかいな物質がとてつもない環境破壊を引き起こす。しかも使用済み核燃料は密閉して半永久的に地中深く埋め込むしか方法がないという。福島原発周辺の町や村はチェルノブイリと同様、これから何十年も人間の住めないゴ―ストタウン化してしまうのだろうか。狭い日本でこんなことが二度と起きてはいけない。電気がなければ無いように工夫して生活していくしかないのだ。しかし、ひとたび便利に慣れてしまうと後戻りできない悲しい習性が人間にはある。原発の地元では、町全体が原発で生活が成り立ってしまっているという現実がある。いつの世も理想と現実は相反するのだ。

今年の夏の節電対策のもう一つの話題は国を挙げての「スーパークールビズ」の推進だ。官庁や企業のノーネクタイは今までのクールビズ。今年は一段とクールにTシャツ、アロハシャツにチノパン、Gパン、短パンもOKというところもあるらしい。スーパーやデパートではクールビズをうたった衣料品やグッズの特設コーナーを設けてお客を呼び込んでいる。しかし、アロハシャツやGパンが仕事着としてクールビズかどうかは疑問である。やはり服装はTPOをわきまえて着用したいというのが私の意見だ。仕事とプライベートははっきり区別すべきで、生活にはメリハリも大切だ。私はとりあえずクールビズ素材の下着を買った。それにしても、今年は平年より2週間ほど早い梅雨入りで今日も朝から一日中雨、6月だというのに4月初旬並みの寒さだ。このままなら今年の夏はエアコンは必要ないか。そうはいかないだろう。(2011・6・2)

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