アンドレのフォト・エッセイ「青春日和」No.63

“Do it yourself”

いよいよ今年も残すところ5日になってしまった。あっという間の1年であった。子供のころは1日がとても長く、ましてや1年はとても長く感じたのに、年齢とともに時間の経過を短く感じるのはなぜなのだろう。いろいろ諸説があるようだ。@情報過多になり、やりたいことが多くて「時間が足りない」と感じる、A記憶や意識に残る時間と体感時間が比例する。B残りの人生の長さで1年を割ったものが1年の体感時間。C身体の代謝の状態が活発であれば心的時計は早く進み、不活発であれば心的時計は遅く進む。高齢になると代謝は低下するので心的時計は遅くなり、実際の時間の経過を早く感じる。・・・・・いずれにしても物理的要素や心的要素が複合的に影響して感じるということだろう。

さて、12月はお正月を間近に控えて、年賀状書きや家の大掃除など1年中で一番忙しい。師走とはよく言ったもので、ふだんゆっくり歩いているお坊さんも12月は走り回るという。部屋の蛍光灯も3年ぶりくらいに新しい蛍光管と取り換えて、家中の窓ガラスを久しぶりに磨いた頃、かみさんから和室の障子紙の張り替えの注文が来た。今どきの家なので障子戸のある和室は1つだけ、障子戸は4本だけだ。今は障子紙を破るような小さな子供もいないのでそんなに破れてはいないが、白い障子紙がだいぶ黄色くなっていた。そういえば、もう5年以上も張り替えていなかった。毎週来客があったり(かみさんが趣味の教室を開いている)、久しぶりに孫たちが正月休みで帰ってきて寝る部屋なので、「よし!新しい障子紙に張り替えるか」、とホームセンターへ走って障子紙と糊と古い紙の剥がし剤を買ってきた。占めて材料代は1,000円でおつりが来た。

「Do it youerself(自分のことは自分でする)」が私の身上だ。自分でできることはできるだけ自分でやるようにしている。8畳の和室を片づけて障子戸を1つひとつ、まず古い紙を剥がす作業だ。これはいたって簡単。昔は障子戸は川に持って行って川の水で紙を剥がして洗った。それは随分昔の田舎の話で、もちろん私にはそんな経験も記憶もない。今は紙剥がし剤という便利なものがあって簡単に綺麗に剥がれる。次に濡れぞうきんで桟を1本づつ丁寧に紙くずや古い糊を落とす、これで下準備ができた。ここまでで午前中半日が過ぎた。

さて、昼食休憩後新しい紙を貼ろうと思ったら、かみさんがスーパーへ買い物に行くというのでアッシー君を頼まれて、帰ってきたのは午後の3時半、それでも夕食までにはまだ時間があったので紙を貼ることにした。糊を丁寧に桟に塗る。あまり付け過ぎてもいけないが、付け足らなくてもいけない、結構難しいものだ。専用の刷毛はないので古い歯ブラシで糊を伸ばした。紙もぴったりサイズの4本まで貼れますというのを買ってきた。説明も書いてあって素人にもできるようになっている。説明書通り何とか弛まないで貼れた。乾いてから余分なところを定規を当ててカッターで切る。これが結構手間が掛って難しい。多少曲がったり、つっかったりして何とか切った。戸の外側で部屋からは見えないところなので、多少のところは勘弁してもらう。素人と玄人の差はこんなところで出てしまう。2本貼ったところで夕食時間になってしまったので今日は中断。

さて翌日は午前中用事があったので、午後から残りの2本の紙を貼る。4本目の戸に新しい紙を当ててみたところで紙のサイズが3分の1ほど足りなくなってしまった。多少の余裕があるはずだが、素人ゆえ随分無駄に紙を使ってきたのがいけなかったか。よく考えたら、我が家の障子戸は普通サイズよりも丈が高かった。翌日もう一度ホームセンターへ行って紙を買ってきた。全部張り終えたら霧吹きで軽く水で霧を吹いて貼った紙の弛みをピンとさせて終了。3日間、延べ6時間ほどかかって完成した。翌日腰が痛くてギックリ腰になりそうになった。気を付けないと同じ姿勢で長い作業をすると、腰の疲れから持病のギックリ腰が再発するのは経験上心得ている。「Do it yourself」もなかなか大変である。これで和室も明るくなっていい正月が迎えられそうだ。風呂でゆっくり腰を温めた。風呂から上がったら孫から「29日の朝行くからね」と電話があった。(2010・12・26)

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