アンドレのフォト・エッセイ「青春日和」No.53

“人間も動物も忍耐が必要だ!”

人間は生きている限り運動をしないといけない。筋肉は使わないとどんどん衰えていく。病気で入院して10日もベッドに寝たきりでいると脚がふらついてトイレに行くのも大変になってしまうのは経験者なら知っている。昔はどこへ行くにも歩いて行くしか方法がなかったから昔の人は脚が相当丈夫だったに違いない。現代人は少しの距離でも車に乗ってしまうので昔の人の10分の1も歩かないのではないだろうか。筋肉の中でも足の筋肉が一番大切だと実感している。だから盛んにみんなジョギングやウォーキングに汗を流しているのだ。

ご多分にもれず、私も週3日ほど昼食後にウォーキングをしている。昔は朝早や起きして朝食前に歩いたが、最近、空腹で運動をしないほうが良いと言われて、それに冬の朝は寒いので今では昼食後にしている。ニットの帽子をかぶってマスクをしているので、すれ違っても誰だかわからない恰好をしている。自宅から周囲5,5キロの佐鳴湖を一周してくると往復7キロくらい、1万2千歩で2時間のコースである。戻ってくるとちょうど3時のおやつの時間になるので、テレビを見ながらコーヒーとクッキーなどをいただくのが午後の楽しい日課となっている。

この日課の佐鳴湖一周ウォーキングの楽しみの一つに、団地から佐鳴湖に注ぐ新川でのシラサギとカワセミとの出会いがある。写真のシラサギは、水がせき止められたこの場所で、必ず毎日ジッと小魚が来るのを待っている。往きに見て、「お!今日もジッと待っているな」と横を通る。佐鳴湖を一周して帰ってきても、まだジッとひたすら小魚が来るのを待っている。冷たい水の中で何時間もただひたすらジッと待っているなんて、ずいぶん忍耐強いシラサギである。足がシモヤケにならないだろうか、運動不足にならないだろうかと余計な心配をしてしまう。少し下流に行くと小魚が群れをなして泳ぎ回っているのを知らないのだろうか、教えてあげたくなってしまう。

もう一つの楽しみは、この新川で必ずカワセミに出会うようになったことである。それもツガイである。コバルトブルーの美しい姿は野鳥観察の中でも一番人気である。しかしカワセミは警戒心が強くて素早く、一か所でジッとしていることがないのでカメラで撮るのは至難の技である。ましてコンパクトデジカメではせいぜいこの写真の程度でしか撮れない。何回も逃げられてやっと2カットほど撮れた中の1枚である。最望遠にして撮って、しかもかなりトリミング加工してある。撮るのが難しいと余計に挑戦したくなるものだ。

このカワセミの姿を撮り続けているアマチャーカメラマンがいる。カワセミが止まるポイントに照準を合わせて望遠レンズを付けた一眼レフに三脚をセットして、ただひたすらカワセミが来るのを何時間も待ち続けている。野鳥の撮影も忍耐が必要だ。そのアマチャーカメラマンの周りにウォーキングの人たちがたくさん集まって見物している。これではカワセミも姿を見せないと思う。カメラマンも弱り切ってジッと我慢している。最近佐鳴湖では日増しに野鳥を撮影するアマチャーカメラマンが増えた。今日だけでも佐鳴湖畔で望遠レンズを構えているアマチャーカメラマンを8人ほど見かけた。

忍耐強いといえば、ただひたすら釣り糸を垂らして、いつ釣れるとも知れない魚を待っている釣り人も佐鳴湖には大勢やってくる。もっとも佐鳴湖の魚は釣れても食べるわけではなく、ほとんどリリースしているので、彼らにとっては釣れても釣れなくても余り関係ないのだろうか。私は釣りには趣味がないので良く分からない。写真は私も50年前から撮っているので忍耐が必要なのは良く分かる。しかし、まだ人生の就業が足りないのか、これほど「ただひたすらジッと忍耐強く待つ」というのは駄目である。(2010・1・10)

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