アンドレのフォト・エッセイ「青春日和」No.44

“ある男性に教えられた「百間滝」を訪ねて”

百間滝

一昨年、障害者にパソコンを指導する県の施設のコーナーでアルバイトをしていた頃、コーナーの隣の机の上で、毎日のようにノートパソコンと資料を持参して、右半身不随の体に鞭打ちながら自分のホームページ作りに一日中打ち込む熱心な60歳前後の男性がいた。余りの熱心さに、話しかけることもままならなかったが、時おり休んでいる時に話を聞く機会があった。男性は1年ほど前に東京へ出張中に突然脳出血に見舞われ、以来半身不随になってしまったという。前職が何であったかは聞くことはできなかったが、人間の運命はある日突然予告もなく闇の中へ引きずり降ろされる。

元の体に完全に戻ることはかなわなくても、少しでも機能の回復を願わないわけがない。彼は機能回復に効果がある温泉の紹介など、自分と同じ境遇の人のためにと、そんなホームページを立ち上げようとしていたのだった。そんな話の中で、新城市にある「百間滝」を紹介された。「百間滝」は日本最長の断層帯・中央構造線の深い谷の中にあり、地中深くから湧き出る「気」が百間滝で検出され、日本でも最高レベルの「気」のパワースポットだそうだ。「私もこの間仲間と頑張って行ってきて、すごい「気」をもらってきた。あなたも是非行ってみたら」と紹介してくれた。

あれ以来、気にはなっていたがついぞ行きそびれていた。たまたま近くの「阿寺の七滝」に行く機会があったので思い出して行ってみた。阿寺の七滝からは車で10分ほどの近いところにあった。案内板も分かり易く出ていた。滝の入口には駐車場はなく、少し手前のトイレのある広場に車を止めた。「滝の降り口」の案内板のあるところには竹の杖がいくつか用意されていた。一つ杖を借りて下りて行った。結構急な狭い坂をだらだらと下って行った。やがて水のある岩場に出てきた。向こうから4,5人の家族もやってきた。どうやらそこは滝の上部のようだった。さらに下って行くと、やがて滝の流れる音が聞こえてきた。さらに下ると、やっと滝が見えてきた。思いのほか素晴らしい滝だ。かみさんは「今まで見た滝の中で一番素晴らしい」と言った

幾重にも、幾段にも変化に富んだ滝の流れである。椅子のある休憩場所からさらに下って行くと、もう一つの休憩所があり、ここからは滝壺が見えた。しかし途中で曲がっているため、落差120mの全容を見ることはできない。顔に霧が掛かってひんやりと「気」を感じるような気がした。彼は半身不随の体でここまで下りてきたのだろうか。健脚の私でさえなかなかきつかった。ここでおにぎりを頬張りながらしばらく休憩の後、今度は急な登り坂をゆっくり登った、途中「道路まで近道」の案内のある道を登って行ったら、なんと、来たときの5分の1ほどの距離で道路に出てしまった。最初からここを降りればよかったとは後の祭りだった。近くに名水の湧き出るところがあり、何人もの人がペットボトルに水を汲んでいた。(2009・4・29)

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