アンドレのフォト・エッセイ「青春日和」No.42

“富士山静岡空港見学記”

富士山静岡空港

3月21日、アクティブシニアネット(浜松市内の企業退職者で構成する元気な仲間)の会員18人でマイクロバスを借り切って、6月4日に正式に開港が決まった富士山静岡空港の見学に初めて行ってきた。浜松駅前を9時に出発、東名浜松ICから牧之原ICで下りて空港に向かったが、まだアクセス道路が完全でないため、くねくねした茶畑の間の田舎道をぐるぐる回ってやっと、空港のすぐ下にある石雲院という古いお寺の境内の駐車場に到着した。見学の予約をしてあったので、今日は特別に空港内を案内してくださるという県の空港関係の職員Nさんとここで待ち合わせの約束になっていた。何でも今日は特別に一般の見学者が立ち入ることのできない空港内を隅から隅まで案内してくださるということだ。駐車場に着くと間もなくヘルメットを被ったそのNさんがマイクロバスに乗り込んできた。

石雲院のすぐ上が静岡空港だった。一般の見学者の展望台は石雲院の境内右手の急な上り坂を100メートルほど登るとあるが、バスは直接空港内の建設現場に向かった。当初3月開港予定で工事が進められていたこともあって、管制塔、旅客ターミナルビル、消防庁舎、給油施設などの建物は既に完成していた。今は建物内部の屋内設備の工事が着々と行われているようだ。完成済みの2、000台の無料駐車場の間を進んで滑走路の西端へと向かい、そこでマイクロバスを止めた。滑走路の西の方角にある問題の立木も確認できた。そこでNさんは地権者との交渉の苦労話を語ってくれた。移転民家は200軒ほどだが、反対派地権者は立木の1本1本を全国の空港反対派に譲渡してしまったため、地権者の数が50倍にも膨れてしまい、その一人ひとりを確認して、困難な交渉を重ねてきたという。Nさんもたった1本の立木の買収交渉のためにロスアンゼルスまで飛んで行ったそうだ。空港開設には紆余曲折いろいろ問題があるにせよ、そんな苦労話を聞くと、直接の担当者にはつい同情してしまう。

さらにマイクロバスは滑走路の外周道路を進んだ。滑走路の周りには12個の調整池が作られている。大雨が降った場合の洪水対策だ。滑走路は水はけを考慮して傾斜しているそうだが、高低差は12メートルもあるという。空港の周りには金網のフェンスが張りめぐらされている。動物が滑走路に進入しないための対策だ。意外と空港には動物が侵入するという。イノシシ、タヌキ、ネコなどだ。しかし何といっても一番怖いのは鳥だそうだ。空港で一番難しいのはこのバードストライク対策だ。つい最近もアメリカでバードストライクに遭遇してハドソン川に不時着したニュースが耳に新しい。鳥は空から来るので防ぎようがない。鳥の中でも被害が多いのは水鳥だが、静岡空港は海から遠いので、水鳥の飛来が少ないのは助かるという。

空港が開港したら二度と見ることができない滑走路の東端に来た。西に一直線に伸びる滑走路が一望できる。静岡空港の特徴は、ここで削った山の土を空港の谷に埋めて使うなど、谷を埋めるのに外からの土を使わなかったそうだ。おかげで外地の雑草が生えないので生態系が崩れない。また、斜面には環境にやさしい里山の木を植えたという。滑走路のアスファルトの厚さは21センチで、滑走路に埋められている誘導灯が一個10数万円もしたり、空港の建設費はお金が掛かる。消防庁舎の中には、既に3台の化学消防車が格納されていたが、1台2億円もするそうだ。国内最大級の水槽容量1万2千5百リットルの化学消火剤を積んで、瞬時に現場に駆け付けて消火活動が出来る能力を備えている。

最後にいわゆるエプロン部分を通って、空港施設を一周して来た。空港が完成してからは一般の人は決して見ることができない場所、角度からも見ることが出来て約1時間ほど、空港職員Nさんの直接の解説付きで有意義な空港見学を楽しむことができた。この後、一般の人が見学する、石雲院裏手の展望台にも登って見てきた。結構見学者が来ていた。この後、車内でお弁当をいただいた後、次の見学先の浜丘原子力発電所に向かった。「静岡空港はほんとに利用価値があるのか」、「県民のお荷物になるだけだ」、など、様々な意見があることも確かだ。しかし、できてしまったなら、できるだけ活用できるような知恵を絞るしかない。プラス思考で進むしかないだろう。(2009・3・22)

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