アンドレのフォト・エッセイ「青春日和」No.39

“今年は大「変」な年でした”

クリスマス・イルミネーション

とうとう今年もクリスマスがやって来ました。団地の某邸宅のクリスマス・イルミネーションは今年の暮もフル装備で輝いています。そんな華やかさとは裏腹に1年の世相を漢字一文字で表す「今年の漢字」が決まり、京都清水寺の森清範貫主が揮毫した2008年の漢字一文字は「変」でした。「チェンジ」を訴え続け大統領選を勝ち取った米国初めての黒人大統領候補オバマ氏の影響からか、日本国民も「変革」を求めている表れでしょうか。

まず、今年は「後期高齢者」という言葉に日本中の高齢者たちが怒りました。2008年4月から施行された「後期高齢者医療制度」は、75歳以上を「後期高齢者」と呼び、それまでの保険制度から区別して、75歳以上のハイリスクグロープで保険料を負担していただこうというものです。しかも保険料を年金から天引きするという。当然ながら75歳以上は終末医療など入院医療が多くなり高額医療費となるため増え続ける医療費を削減するのが狙いだ。「何で75歳で線を引くのか」「姥捨て山だ」「生きたければ金を出せ、金がなければ早く死ね, というのか」など、高齢者いじめの制度と、後期高齢者はみんな怒りました。

そして、毎年問題となっている年金問題に、今度は年金記録改ざん問題が出てきました。年金記録漏れに続く社会保険庁のでたらめな業務に呆れてものが言えません。全てが組織ぐるみとあっては国家的犯罪行為です。保険料負担を少なくしたい事業主と、保険料の徴収率を高めたい社会保険庁の思惑の一致が原因のようであるが、誰もこの問題で責任をとる者がいないのも「平和ボケ日本」らしいところです。年金記録漏れ、年金記録改ざんなど、真面目に働いて保険料を納めたにもかかわらず、正しい年金がもらえない国民が沢山いて、しかも、そのほとんどが修正されずに泣き寝入りの状態です。もらえるものももらえず、保険料を年金から天引きします、と言われても納得がいかないのは当然の話です。

このところ毎年問題となっている食の安全問題は、中国毒ギョーザに始まって、事故米、汚染米が大きく報道されました。赤福や船場吉兆など、今までの一企業のモラルの問題から、国の対応の問題が大きくクローズアップされました。メタミドホスという殺虫剤の名前も覚えてしまいました。中国毒ギョーザ問題はその後解決されたという話は聞いていませんが、どうなってしまったのでしょうか。中国産などの食品を国産と偽って販売するケースはいくつも摘発されています。食品に書かれている「国内産」「国産原料使用」はみんな嘘のように見えてしまいます。こうなると、何を信じて食べればいいのか分からなくなってしまいます。

秋葉原の通り魔事件も記憶に新しいところです。元厚生労働次官の連続襲撃事件もありました。これはテロ事件では、との憶測も流れましたが、どうやらそうではなかったようです。幼い子供が身近な大人の犠牲になる事件も相次いでいます。誰でもいいから殺したかった、などと、最近は全く予想もつかないような殺人事件が多く発生して、何の関係もない市民が巻き添えとなり、我々市民は自衛の手段がありません。恐ろしい世の中になりました。

昨年の安倍首相に続いての福田首相の辞任劇には驚きました。後任に就いた麻生首相は、就任直後のアメリカのサブプライム問題、大手証券会社リーマンブラザーズの経営破たんに端を発した世界規模での金融経済恐慌により、日本の実質経済にもバブル崩壊以上の影響が出て来た為、当初の解散シナリオが狂ってしまいました。「百年に一度の暴風雨」と危機感を訴え、「政局より政策、何よりも景気対策を優先」と訴え、解散総選挙を先送りしましたが、総理の言葉とは裏腹に政府の経済再建政策の対応もスピード感がなく国民に支持されなくなっています。

年末になってアメリカ発の世界規模での経済不況の影響で、トヨタが、日産が、ソニーが、キャノンが販売不振から減産を発表し、契約社員など非正規社員の大量解雇を発表しました。なかには契約社員のみならず正社員の大幅なリストラも発表されています。当然下請け企業にも波及します。超一流企業の世界のトヨタでさえ59年ぶりの赤字転落となっては、他の企業は推して知るべしです。しかも一部の産業だけではなく全産業的な広がりを見せています。大学生の就職内定者の取り消しが相次いで報道されています。かつてない大規模な大量失業時代が始まっています。正月を間近に控えた年末の寒空のもと、収入もなくなり、住む処も失う人たちがたくさん出ているのです。とても今の政府の対策では対応が間に合いません。政府の遅い対応を待っている訳にはいかないと、各自治体が失業者の住宅や仕事の世話に即座に対応を始めたのはせめてもの救いです。

まだまだ暗いニュースがありました。救急車で運ばれた妊婦を受け入れてくれる病院がなく、たらい回しにされて亡くなってしまったという話です。産婦人科の医師が極端に不足しているというのです。世界でも有数の先進国日本の、しかも東京での話です。これではほとんど無医村状態です。不足なのは産婦人科の医師ばかりではないようです。地方の公立の総合病院では経営難から医師が不足して廃業に追い込まれているとの話がたくさん報道されています。早急に抜本的な対策を講じないと日本の医療が大変なことになっています。

いろいろ暗いニュースばかり続きましたが、明るいニュースがないわけではありません。スポーツ界では北京オリンピックでの日本選手の活躍がありました。女子ソフトボール、水泳の北島康介選手、男子400メートルリレーの活躍は記憶に新しいところです。ゴルフの石川遼選手の活躍が輝きました。プロ1年目、史上最年少の17歳で賞金1億円超を獲得、賞金ランキング5位は驚きです。最優秀新人賞は文句のないところです。そして最後の明るい話題と言えば、日本人4人のノーベル賞受賞のニュースでしょう。日本人が4人も一度に受賞するのは初めてです。しかも授賞式に日本語のスピーチが流れたのにもビックリしました。テレビで見た授賞式の雰囲気は素晴らしいものでした。

今年も明るいニュース、暗いニュースが沢山ありましたが、ノーベル賞受賞という最大の明るいニュースと企業の大量解雇という最大の暗いニュースがともに年末に大きく報道されるという、何とも皮肉な結果になりました。それにしても、来年は年初めからもっと不況の波が押し寄せてくるのは必至です。それもバブル崩壊の時のように、日本だけの問題ではなく、今回は世界規模であるということです。早く解散総選挙をやって、日本もチェンジをしないと出口の見えない暗いトンネルに入ってしまうような気がします。(2008・12・25)

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