アンドレのフォト・エッセイ「青春日和」No.38

“もしかしてへバーデン結節かも?”

へバーデン結節

私は15歳の時から下手の横好きでクラシックギターを弾いている。もうかれこれ50年以上も弾き続けていることになるが一向に上達しないどころか、最近どんどん下手になっているような気がする。それでも還暦を機会に自分への挑戦のつもりで始めたギターソロ活動は6年目を向かえ、それなりに楽しんでいる。これからも元気なうちは続けていきたいと思っている。

ところが2ヶ月ほど前から何となく右手人差し指のタッチがおかしいと感じるようになった。いつものように弾いていても弦をしゃくり上げるようなタッチになってしまうのだ。単に下手になっているのとは違う感じがして気になっていた。そして最近気がついたのは人差し指の第一関節が内側に曲がっているのだ。突き指をした記憶もないのにだ。そういえば時々第一関節がチクッと針で刺すように痛い時がある。たまたま知人の女性が私の指が曲がっているのに気づいて気になっていたと告白された。彼女も指の第一関節が変形してきて悩んでいたという。だから私の指が曲がっているのにすぐ気がついたのだ。「それはへバーデン結節っていうのよ」と彼女が教えてくれた。初めて聞く病名だ。加齢による病気で原因も治療法もわからないという。

ネットで調べたらいろいろ書かれていた。第一関節が変形する変形性関節症。第一関節の爪側に二つの硬い隆起(結節)ができて、指が変形することがある。第二、第三関節が障害されるリュウマチとは違い第一関節のみが障害されるのが特徴だ。原因は不明だが、加齢による、女性ホルモンが関係している、ストレスを受けやすい体質が原因、過労や過度の使用で長年手指を酷使したのが原因、といろいろな原因が羅列されているが、要は原因がはっきりしないらしい。更年期以降の女性に多いという。1802年イギリスの内科医ヘバーデンがこの疾患を報告した。もう200年以上も前に医学界に発表されたのに、未だに原因も治療法も分かっていないなんてどうしてなのか。

他の友達に告白したら、仕事を一生懸命やり過ぎた勲章のようなものだと慰めてくれた。仕事をそんなに一生懸命やった覚えもないし、ギターの練習をやり過ぎた記憶もないのに何が原因なのだろう。病気には必ず原因があるはずだ。「加齢に伴う病気です」、と簡単に片付けられのも癪である。 主な症状は関節の変形で初期には赤く腫れたり痛みが生じる。通常は数年で痛みはなくなり変形も進まなくなるが、変形した指は元には戻らないという。自己診断では症状がよく似ていて多分へバーデン結節のような気がする。原因も不明、治療法も分からないとなれば病院に行っても仕方がないだろうと、まだ病院には行っていない。

ギターを弾く時の右指のタッチは微妙だ。1mmも内側に角度が変わったら可なり影響してしまう。50年間身についた指の角度は調整が不可能に近い。内側に曲った分、どうしても弦をしゃくり上げた格好になってしまうのも理由が分かった。もしそうだとすると、このまま症状が進行すると、いつかギターが弾けない日が来るかもしれない。もうその時は諦めるしかないのかも。曲った指は元通りには直らないのだ。一度しかない人生、そんなことでくよくよしても仕方がない。でも、音楽好きの私がギターが弾けなくなったら淋しいかも。別に命にかかわる問題ではないのだからその時はその時、今から悩んでも仕方がない。人生ケセラセラだ。(2008・11・22)

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