アンドレのフォト・エッセイ「青春日和」No.37

“男の料理教室”

男の料理

男66歳にして生まれて初めて料理に挑戦している。「男子厨房に入らず」の時代ほどでもないが、料理は女性がやるものとして生まれ育った私にとって、料理は一番苦手な科目の一つである。3世代家族が同じ屋根の下で暮らすのが当たり前だった昔は、万一かみさんに先立たれたお爺さんの食事の支度は長男のお嫁さんがやってくれた。現代は核家族化で、我が家でも15年前からかみさんと2人暮らし、女性の方が長生きとはいっても、こればかりは分からない。家の周りにも奥さんに先立たれて独り暮らしをしている熟年男性は結構いる。

スーパーへ行けば、チンすれば直ぐに食べられる出来上がりの食材がたくさん並んでいる。ひとり暮らしでもお金さへ払えば食べるには困らない世の中だ。煮魚、焼き魚、野菜の煮物、天ぷら、おでん・・・・・。ごはんだって焚いたごはんがパックになってチンするだけの至れり尽くせりである。それなら料理なんて習う必要もないと思うが、そうはいかないのが現実である。スーパーの出来上がり料理は味が濃くて画一で、すぐに飽きてしまい栄養も偏りがちである。やはり家庭の手作りの料理には敵わない。熟年男性が一人で買い物篭を抱えてメモ帳を見ながらスーパーの店内をウロウロしている姿は余り格好いいものではないと思ったりする。しかし、食べないわけには行かないのも現実である。

さて、5年ほど前に友人たちと仲間で作った定年退職者のサークル「アクティブシニアネット」では、今年から有志を募って「男の料理教室」を開講した。講師はサークルのメンバーの中で料理の得意なメンバーが交代で担当してくれる。市の公民館などでも数年前から「男の料理教室」が盛んで、結構盛況のようである。みんな必要性を感じている証拠だ。最近の20代から50代の男性のアンケートによれば、週1回以上料理をしている男性は80%、残りの20%も月1回は何らかの料理をしているという。料理が好きだからという男性も50%近くいるという。もちろん単身赴任や一人暮らしで止むを得ずという、必要に迫られてというのも20%いる。それにしても最近は以外に男性も料理をしているのだ。

「私も料理を覚えないと」、とは思っていてもなかなか参加するきっかけがなかった。今年サークルの仲間が「男の料理教室」をやってくれたので早速参加した。かみさんの花柄の前掛けを借りて、頭に三角巾の代わりに手拭いを巻いて公民館の2階、料理教室に午前10時に集合した。今日の参加者は講師を入れて11人だった。最近の公民館の料理教室の設備は充実している。ガスコンロ6個と流し台2個がセットになった調理台が4セットと電子レンジ、冷蔵庫、鍋、炊飯器、包丁、器各種、・・・・つまり料理の道具はすべて揃っている。後は材料を持ち込めばどんな料理でも調理できてしまう。これで10時から13時まで3時間借りて部屋代が1,350円はタダのようなものだ。そして、今日の会費も講師がサークルのメンバーなので材料代だけの1,000円だった。

今日のメニューは、ご飯を炊いて、ぶりの照り焼き、豆腐ときのこのおかか煮、大根と柚子の即席漬けに、煮干しからダシを取る味噌汁の4品と本格的なものだった。一通り講師のOさんの話を聞いて料理開始、しかし、段どりがさっぱりわからず、レシピの説明書と首っ引き、何回も講師を呼んで助けを求める。「大根はそんな厚くては駄目、もっと薄く」、「余り細かいことには拘らないのが男の料理」、「どっちを先に入れるんだっけ」、「11時になったからご飯のスイッチを入れないと」・・・と、ワイワイがやがや賑やかに料理が進んでいく。手分けして調理していくうちに何とか4品の料理ができてきた。

料理を器に盛って机に並べた。なかなか立派な出来栄えである。ブリの照り焼きなどはこんがりといい色だ。12時丁度に全員の料理が完成してみんなで試食した。自分でお世辞を言っても仕方がないが、どれもなかなかいい味である。やればできると自信がついた。これなら「男子厨房に入るべし」である。ただし、もともと何にでも凝り性の私である。余り料理に熱を入れるのはどうかと考えている。。今朝もかみさんに言われた。「料理を習ったら家で作ってよ」。今に見て下さいよ、そのうち我が家でも美味しい料理を作ろうと思っている。しかし余り上手くなってかみさんを超えてしまって家庭崩壊につながってしまっては元も子もありません。そこが難しいところである。(2008・11・8)

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