アンドレのフォト・エッセイ「青春日和」No.36

“カラスウリの花”

カラスウリの花

カラスウリはカラスが好んで食べるからこんな名前がついたのだろうか?秋にはカラスウリの実が赤く熟す。雑木林などに卵型の赤や朱色の果実がぶら下がっているのをよく見かける。カラスが食べ残したのだろうと、カラスウリの名前がついたとも言われている。野鳥の専門家に聞いても、カラスは食べないという人もいれば、食べる所を見たという人もいる。赤いカラスウリの実と熟した柿の実を木の枝にぶら下げて置いたら、小鳥は柿の方ばかり寄って来たという。鳥たちはどちらが美味しいかよく知っている。いずれにしてもカラスの大好物ということではないらしい。

カラスウリの花は7月から9月の夏の日没後、夕闇が迫ると開花し、翌朝にはしぼんでしまうので、昼間は咲いている花を見ることができない。朝5時起きで佐鳴湖公園を散歩するとまだしぼむ前の花を見ることができる。ただし、完全な形のレースを広げたような花にはなかなか出会えない。蕾の時はきれいに折りたたまれている糸が、一っ糸乱れず見る見る伸びてレースのように開き、独特の姿をしています。咲きはじめから完全に出来上がるまで約30分、夏の夕闇の中で瞬時にあの優美で繊細なレース編みを仕上げてしまう自然の妙技には驚きます。その傑作も、一夜の夢のように、翌朝には萎んでしまう。ヨルガオ、ゲッカビジンなど、夜咲く花は白い花が多い。白い花は月の光のもとで良く目立ち、花粉を仲介してくれるスズメガなどの恰好の目印となります。

カラスウリに対して同じつる性で葉も良く似ているスズメウリというのがありますが、こちらは果実も小梅ほど小さく、花も小さな白い花が昼間咲きます。カラスウリは雄株と雌株がありどちらも花が咲きますが、雄花は葉の付け根に数個かたまって付くのに対して、雌花はただ1個だけ付き、筒の下が少し膨れたもの(子房)が付いているので見分けがつく。秋に赤い果実がなるのは雌株だけです。果実の中に入っている種子は「カマキリの頭」と形容されたり、大きな耳を持った「福の神・大黒様」の顔にも見えます。逆さに見て「打ち出の小槌」に見立てる人もいます。このことから、財布に入れて福を願う習慣もあるそうです。

つる科のカラスウリは他の樹木等に絡まりながら10メートル以上にもつるが伸びます。秋になると、つるの先端が不思議なことに地面に向かって降りてきます。そして土の中にもぐって根を出しイモを作ります。新しく出来たイモは独立した株となり、つるを出して成長します。種だけでなく、つるでも子孫を増やしているのです。根から採れるでんぷんは「天瓜粉・天花粉」と呼ばれ、あせもなどに利用されます。また、クズ粉を作る要領で乾燥させた粉で餅を作り食料としました。未熟な果実は塩漬けやみそ漬けなどにして食べられました。赤く熟した果実は、ひび、しもやけ、あかぎれなどの皮膚の荒れた時の予防薬に利用されます。最も冬でも暖房が利いて温かいし、水道をひねればいつでもお湯が出る現代では、しもやけやあかぎれに悩む子供はいなくなってしまったが。(2008・8・23)

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