アンドレのフォト・エッセイ「青春日和」No.29

“クリスマスローズに魅せられた今井富士子さん”

クリスマスローズ

知人のNさんに紹介された富塚町の今井富士子さんのオープンガーデンを初めて訪問した。余りの歓迎ぶりと素晴らしいお庭と、楽しいひと時を過ごすことができた感激に、「青春日和」を書かないわけにはいかなくなりました。

Nさんの紹介では、今井さんの庭はクリスマスローズがメインで今が花の最盛期で一番美しい時だということ、予約が必要なこと、きっと、飛び上がらんばかりに歓迎してくれるはずだ、とのアドバイスだった。早速電話を入れたら明るい元気な女性の声が返ってきた。「ぜひ、見に来てください。午前中ならいいですよ。午後は孫を迎えに行かないといけないけど」と、知らない私を大歓迎してくださるご返事。早速予約日の晴天の早朝、約束の9時半にお邪魔した。朝9時半は少し早くてお邪魔かもしれないが、花は早朝が一番美しいこと、朝の斜めの柔らかい光が花を一番美しく見せることを説明して、花好きな人なら必ず理解してくださることを知っての頼みだ。一般の住宅街の中で、一見してガーデニングの庭とすぐに見分けの付くお宅だ。小高い南の角の日当たりの良い庭だった。なるほど、小じんまりした庭に、アンティークな鉢に植えられたクリスマスローズが庭一面に咲き誇っていた。玄関のベルを鳴らすと、すぐに奥さんが出てきてくださった。電話の声とおなじ気取らない感じの小柄な普通のご家庭の奥さんだ。早速庭中のクリスマスローズの花の説明をしてくださった。もともと若い時から花は好きっだったという。今ではクリスマスローズも約30種類ほど咲いているという。よく見ると一株一株みんな微妙に花の色が違っている。

「35年ほど前に一株のクリスマスローズを購入して育て始め、種から可愛がって50株ほど増えました。ミツバチが自然交配してくれた、我が家のオリジナルがたくさんあります。長い間子供を育てるように大事に育ててきました。新しい株は3年たてば花が咲くようになります。パステル調の色彩に染まる庭を毎日眺め、「青空の下の部屋」感覚で楽しんでいます。古くなるほど味の出る庭に、花や緑もしっくりなじみ、心が安らぐ花と緑に囲まれて暮らす幸せ、ガーデニングは私のエネルギーです。私が育てたクリスマスローズを見て感動してくださるのが励みです。夫も協力してくれるので助かります。生涯現役で健康に気を付けて、大好きなガーデニングに頑張りたいです。」・・・・(2007・3・5静岡新聞「つぶやき」投稿文より)

2006年にオープンガーデンにして新聞やテレビで紹介されてから、遠方から見学にやって来る方が絶えないという。マスコミ取材も毎年あるそうだ。花が縁で親しくなったお友達もたくさんできたが、あるパン屋さんの奥さんが最近ガンで亡くなって、今井さんのクリスマスローズが、そのパン屋さんの庭で今でも咲き続けている、というお話を伺いました。花が縁でいろいろな人との交流が生まれ、花は自分の豊かな人生になっているといいます。今井さんのお話の中で、必ず庭の花を「この子」と呼んでいました。花を自分の子供のように可愛がっている様子が伺われ、心のやさしい女性なんだなと感じました。一通り庭の花の説明を聞いて、花の写真の取材を終わったところで、コーヒーを入れてくださいました。庭の奥のベンチに腰かけてクリスマスローズの花を眺めながら温かいコーヒーをいただくと、まさに「青空の下の部屋」の爽快な気分でした。

今井さんの庭の花はクリスマスローズのほかに、6月頃に咲くアナベルがあるそうです。アナベルとは別名西洋アジサイと呼ばれる、日本のアジサイに似た白い清楚な美しい花だそうです。冬は根元近くまで株が刈られて丸坊主ですが、春になると芽が出て枝が伸び青々とした葉が茂って、6月には白い美しい花が咲くそうです。花が終わったらドライフラワーにすると、いつまでも楽しめていいですよとおっしゃって、部屋の中も案内してくださいました。部屋の中はやはり奥さんの大好きなアンティークに囲まれて、アナベルのドライフラワーがいっぱいでした。何と帰り際に鉢植えのクリスマスローズをお土産にいただいてしまいました。9時半にお邪魔して11時半までたっぷり2時間もお邪魔してしまいました。ご主人は2階にいらっしゃるようでしたが、「主人は花には興味がないので、おかげでその分私が自由にできます」とおっしゃっていました。それでも車の運転ができない奥さんのために「花屋に一緒に車で行ってくれたり、花に水をやったり協力してくれるので感謝しています」とおっしゃっていました。もうお昼の支度をしないといけない時間なのに随分長居をしてしまいました。庭の入口で手を振って見送ってくださいました。ほんとに花を愛し、花に囲まれて幸せそうな今井さんの明るい笑顔がいつまでも忘れられませんでした。(2008・3・5)

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