アンドレのフォト・エッセイ「青春日和」No.28

“唐鏡研究会に参加して”

唐鏡

知人のNさんから「唐鏡研究会」を計画したから参加しませんか、とお誘いを受けた。計画をしてくださったのはNさんのご友人で世界遺産の会の会長のSさんだそうです。予定もない日だったのでお誘いに甘えることにした。こちらからはNさんの友人を含めて7人が参加するという。それなら私の愛車なら8人乗りだから1台で行きましょうということになった。2月9日の当日は久しぶりにあいにくの雨模様になってしまった。午後12時50分、我が家に4人が集合して出発。佐鳴湖公園中央駐車場で残り3人を乗せて目的地に向かった。今日の行先は磐田市上野部に今年1月にオープンしたばかりの「シルクロード・ミュージアム」だ。ここは浜松市浜北区に本社のある浜名梱包輸送の会長鈴木鉄男さんが約30年にわたって収集した中国やイラン、アフガニスタンなどの古美術品を展示する私設の美術館だ。雨で道路が混んでいたが2時頃に到着した。

世界遺産の会の会長のSさんもご友人を2人ほど伴ってほぼ同時刻にミュージアムに到着した。今日は「シルクロード・ミュージアム」に所蔵されている唐鏡数点を見ながら、元平山郁夫シルクロード美術館の学芸員だったUさんが詳しく解説してくださることになっているという。このミュージアムは約200年前の古民家を買い取り、2年がかりで改修して完成させたそうで、さすがに黒光りする太い柱や梁が見事だ。Uさんは2時30分に見えるとのことで、しばらくNさんの友人のFさんに館内を案内していただき見事な土器や仏像、シルクロードの銀貨などを見せていただいた。平山郁夫画伯の絵も何点か飾られていた。

「シルクロードミュージアム」の名誉館長は中央アジア美術史の研究家で中央大学教授の田辺勝美教授である。なんでも鈴木館長の中学時代の同級生だそうだ。鈴木さんがシルクロードに興味を持ったのは、約30年前、イランで発掘調査をしていた田辺教授の誘いで現地を訪れたのがきっかけだったという。もともと土器には興味があった鈴木さんは、イランで初めて骨董品を買い、いつしか集めるようになり二人で各国を飛び回ったそうだ。コレクション約600点のうち、150点を展示、年代や国別に半年置きに入れ替える。中には紀元前と思われるもの、東京国立博物館に貸し出した逸品もあるそうだ。館内の作品を見ているうちに、唐鏡研究家のUさんが夫人を伴って到着した。現在は静岡産業大学非常勤講師でまだ30代の若い研究者だ。早速2階の唐鏡展示品の前で30分ほど解説していただいた。

唐鏡は一般的に「からかがみ」と呼ばれているが、中国の唐の時代の鏡のことで、背面に綺麗な模様が施されている、西暦600年から900年ごろに作られた青銅製の鏡のことだ。年代によって初唐の鏡、盛唐の鏡、中唐の鏡、晩唐の鏡と呼ばれて、年代によって模様に特徴があることを知った。はじめの頃の鏡の模様は細かく密に描かれ、次第に絵柄が大柄になっていく。型も丸から切れ込みが入ったり、四角型も出てくるようになる。材質も青銅に錫が混ざるようになり白っぽいものもある。日本でも唐の文化の影響を受けて飛鳥や奈良時代の古墳から同じような鏡が多数出土している。

展示室での解説が終わった後、引き続き離れの和室に席を移して、唐鏡研究家のUさんを丸く囲んでの和やかな講演だ。Uさん作成の資料や貴重な研究論文の小冊子をいただいたりした。みんな熱心に聞き入って盛り上がったところで、知人Nさんの提供による知る人ぞ知る富塚町・神村製菓謹製の金つばを、本格的なお茶をたてていただいた。これには我々も予定外のできごとで、思いがけず美味しいものをいただいてしまった。予定の1時間半ほどがあっという間に過ぎて、また、私の車に乗り込んで帰宅の途に就いた。今回は知人Nさんのユニークな計画に思わず参加させていただき、今まで馴染みのなかった「唐鏡」の世界を知ることができ、また、行き帰りの車の中も7人でワイワイ話しながらの、まるで遠足気分の楽しい道中だった。友達の友達はみんな友達という事で、人の輪がどんどん広がっていくのは楽しいことである。とても実りの多い良い1日だった。(2008・2・20)

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