アンドレのフォト・エッセイ「青春日和」No.23

“遅かった今年の紅葉”

紅葉

今年の紅葉は夏の異常な暑さが長く続いた影響か、どこも10日ほど遅れたのに加え、例年よりも鮮やかさが冴えなかった。今年も 長野県、岐阜県の紅葉スポットを訪ねてみたがどこも今一つだった。それでも11月末から12月初めにかけて、地元でも一斉に周りの落葉樹が色づき始めた。最後にちょうど孫の用事で東京に行ったついでに家族で日野市の高幡不動尊を訪れた。ここは首都圏の紅葉スポットとして有名なところらしく、全山モミジが赤や黄色に紅葉していて、訪れた12月2日はお天気も上々、紅葉もちょうど見ごろで、しかも日曜日とあって熟年アマチュアカメラマンで大いに賑わっていた。紅葉のビュースポットはご覧の通りのカメラの砲列で、しかも女性の熟年カメラマンならぬカメラウーマンが目立った。

最近は子育てからもご主人からも解放されて、自由時間を大いに楽しむ熟年女性が多くなった。時間も懐も裕福になった熟年女性の持っているカメラはかなりの高級カメラである。私が小さなコンパクトデジカメで撮っていると馬鹿にされそうである。三脚を立てて高級一眼レフカメラで撮っていた女性の隣で遠慮がちに撮っていたら、「邪魔ですか?」と言われてしまったので、「いえ、大丈夫ですよ」と、2カットほど撮ってすぐにその場を逃げてきた。やはり撮影技法を駆使した作品づくりとなるとそれなりの高級カメラでないと無理である。誰もがそんな高等な技術を使えるとは思えないが、高級カメラを持つだけで傑作が撮れるような気がして満足する。アマチュアの場合はそれで幸せなのだ。

50年近く写真を撮ってきた私の場合は、最近は単に美しい写真作品づくりから興味の対象が広がって、もっぱらエッセイの題材づくりと挿絵のカット写真づくり、ホームページの掲載写真が主な目的になってしまったので、どうしてもペン代わりの気軽なコンパクトデジカメが主役になってしまっている。目的が変われば道具も変わるのは当然である。単に奇麗な写真、美しい写真よりも、内容のある写真、何かを語りかけてくる写真を撮り続けている。おかげでかみさんよりも付き合いの長い2台のニコンの一眼レフカメラと1台のキャノンの一眼レフカメラ、交換レンズ数本は居間の棚の中に飾られて眠っている。そのうちいつか再び現役復帰を果たしてあげたいものである。

・・・・・現役を終えた落葉樹の葉っぱは燃え尽きる前のロウソクの一瞬のひらめきのように、真っ赤に染まって人々を楽しませる。みんなに「奇麗だね!」と言われて愛される。やがてそれも色あせて枯葉となって散っていく運命にある。しかし落ち葉は都会では邪魔者扱いにされがちだが、土の世界では命の源である。有機農法にとって落ち葉は貴重な栄養源である。スプーン1杯の土の中には50億のバクテリアと2千万の放線菌、100万の原生動物、2万の藻類、菌類がいる。土の生き物たちは枯葉を食べて肥料を作る役目を果たす。人間だって現役を終えても努力次第で輝いていれるし役に立てるはずだ。人生の最期を単なる濡れ落ち葉で終わりたくないと、誰もが思っている。これからの15年、20年、25年・・・・、まっ赤に燃えなくても、せめて黄色やオレンジ色に燃えてみんなを楽しませることができるだろうか。自分はまだ何かの役に立てるだろうか。・・・・・みんなそう思っている。(2007・12・8)

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