アンドレのフォト・エッセイ「青春日和」No.17

“突然相棒が脳梗塞で倒れた!?”

パソコン

私と苦楽を共にしてきた相棒が突然脳梗塞で倒れた。まだ残暑厳しい8月28日の夕方だった。私とは丸6年の深い付き合いだった。いや、ビックリさせてすみません。相棒とは私の初代のNEC 製デスクトップパソコンのことである。付き合い始めたのは2001年9月8日だった。私の初孫が生まれた翌月だったのでよく覚えている。それまでは息子の古いマックのパソコンでボソボソと書類作りをやっていた。本格的にパソコンを教えてくれたのは、このNECのWindows Meのデスクトップパソコン、私にとっては初めて自分のために買った新品のパソコンである。しかし、いつかはやってくる最後の日に備えて、5月に新しいVistaのデスクトップを新調してデータをすべてVistaにバックアップして万一に備えていた。

その後MEからXPにバージョンアップして時々申し訳程度に付き合っていた。XPにバージョンアップしてからメモリが足りないという感じはあったが、表面的には順調に働いてくれていた。8月28日に3日ぶりくらいに電源を入れてみた。しかし、NECのロゴマークの後、ブルーの画面に英語の文字が並び始めた。どうやらファイルとフォルダとクラスタがどうのこうのという内容らしい。BIOSのセットアップメニューだけは立ち上がったがセーフティモードが立ち上がらない。電源を切ってもう一度電源を入れ直したら、今度はNECのロゴマークの後ハードディスクドライブがカチカチと音を立てるようになった。セーフティモードを立ち上げようと「F8]キーを押したら「ブー!」と音が出るようになった。画面には「operating system not found」と出るばかり。これは完全にハードディスクドライブが壊れたと判断、パソコンシステムに詳しいプロに聞いたらやはり可能性大だという。

パソコンはいつかは壊れるもの、5年経過したらいつ逝ってもいいように準備して置くこと、とは聞いていたが、こんなに突然来るとは思わなかった。今考えてみると、今更MEからXPにバージョンアップしたのがいけなかったのか。停年間近かになって肉体はもうボロボロになっているのに脳みそだけ20代に入れ替えてしまったようなものだ。脳みそは20代の気持で体に命令するのに肉体が付いていけない。万年腰痛に加えて少し運動し過ぎると関節はガクガク、すぐに筋肉痛になる。一つ一つの動作に時間が掛かってしまうのだ。加えて記憶を呼び出すメモリが足りなくなっている。子供のころの記憶はすぐに思い出すのに昨夜の夕食に何を食べたか思い出せない。ちょっと違うかもしれないが似たようなものだ。それに加えて今年の夏の連日の猛暑も関係があるかもしれない。体力が衰えているところへ連日30度を超す猛暑では人間の私でもホトホト参ってしまった。熱に弱いパソコンならなおさらだろう。パソコンのプロも「猛暑も一因かも知れない」と言っている。パソコンだって熱中症になるのだ。メモリ不足がハードディスクを酷使してしまったという可能性もある。電源がダメになることもよくあるという。いずれにしても体力が衰えている上にいろいろな原因が重なってしまった。

機械にも人間の心が通じることがあるという。Vistaの新しいパソコンを新調してNECの古いパソコンに余り構わなくなったのがいけなかったのか。「最近はちっとも電気を食べさせてくれないし、構ってくれない。もう私の役目は終わったんだな、もう用はないんだ」・・・とすねて悟られてしまったのかも知れない。突然脳梗塞で倒れた相棒なのに、救急車を呼ぶこともなく、もう既に覚悟ができていたので準備も万端で、慌てることもなく、相棒には悪かったが涙も出なかった。今更高額な治療代を払って修理して細々と生き長らえさせるよりも、安楽死を選ぶことにした。異常のない内臓は移植に使ってもらうことにした。ほんとうに長い間ご苦労様でした。(2007・9・15)

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