アンドレのフォト・エッセイ「青春日和」No.16

“酸っぱいが体に良い”

うめ

猛暑、酷暑、激暑、烈暑、炎暑・・・・・。いろいろな表現が出てきた今年の夏は記録的な暑さだった。と言ってもまだまだ残暑は続いている。これも地球温暖化の表れなのか。連日30度を超す猛暑日、40度を超えた地域もあった。しかも8月に入ってから雨がほとんど降らなかった。ほんの2日ほど夜中に雷雲が申し訳程度に雨を降らせただけだった。と、この文章を書き終わった8月31日に少し雨らしい雨が降ったが、例年の1〜2%の降雨量だそうだ。毎日朝夕の庭の水やりが大変だった。熱中症で倒れた人が8月中旬で既に都会だけで全国で3000人を超えたそうだ。都会のアスファルトの道路にマンションなどではたまらないだろう。しかも現代人はエアコンに慣れてしまって汗腺が退化しているので体温調節がうまくできない人が多い。私はエアコンは余り好きではないので2階の寝室は網戸と扇風機だけである。頭の下にアイスノンと首にタオルを巻いて汗をびっしょりかいて寝ている。相変わらず原始的な生活をしているので汗腺はすこぶる快調である。

7月に友達に立派な梅をいただいたので久しぶりに梅干しを漬けてみた。漬物用の陶器の瓶がもう何年も庭に放置したままだったので、ホームセンターへ行って新しい漬物容器と重石と天日干し用の竹のざるを買ってきて、シソの葉もファーマーズストアで仕入れてきた。やはり時期だけにシソの葉がたくさん並んでいた。以前漬けた時はカビが生えて失敗した。今度こそ失敗しないように、ネットで梅干しの付け方を探して研究した。お陰で思いのほか立派な梅干しができて庭に3日間天日干しをした。こんな猛暑続きの夏のお陰で、梅干しがよく乾燥した。こんなカンカン照りの太陽をいっぱい浴びればさぞ美味しい梅干しができるはずである。

梅干しを見ただけで、名前を聞いただけで口の中が酸っぱくなってくる人もいるかも知れない。梅干しは日本人の食生活には欠かせない。行楽に出かける時持っていくおにぎりの中には必ずと言っていいほど一つは梅干しのおにぎりが入っている。梅は古く奈良時代か少し前に中国からやってきた。冬枯れの寒さを破り早く花をつけることから「春を呼ぶ目出度い花」として珍重された。万葉集にも梅は桜の3倍の119首も詠まれている。その花の美しさや香ばしい香りから観賞用に、また梅の実は薬用として食された。長期保存できるため非常食にもされた。戦国時代には武士は食糧袋に梅干を常に携行して激しい戦いや長い行軍での息切れを整えたり、生水を飲んだ時の殺菌用、傷口の消毒、出血の時の薬としても使われたようだ。

江戸時代に入ると一気に一般庶民の間にも栽培が広まり、梅干しや梅エキスが作られ始め食べられるようになった。今は庭のあるお宅なら必ず1本は梅の木が植えられているほど人気の植木である。我が家にも紅梅が1本植えられていて春になると濃いピンクの花が咲く。もちろん観賞用だから小さな実は成っても食べたことはない。私が子供のころは現代のようにお菓子が豊富になかったので梅干しがおやつ代わりだった。毎日のように梅干しを食べていた。中の種を割って食べたら「天神さまを食べると頭が悪くなるよ」と、よく母親に叱られた。確か梅干しの種を「天神さま」とか言っていた。今でもその後遺症があるようなないような。

梅干しの効用は何と言ってもその酸味の元のクエン酸により唾液と消化液の分泌を促進し、内臓の働きを活発にすることでしょう。そのため食欲もすすみ消化吸収を助ける。食中毒の原因の多くは酸に弱いので、クエン酸の優れた殺菌作用により食中毒から守ってくれる。平安時代には下痢止めや疫病予防にも使われていたという。疲れの原因の一つである血液中の乳酸の増加を抑え、さらに老化を防ぐとも言われる。

人間が健康でいるためには、体液が弱アルカリ性に保たれている必要がある。加工食品やインスタント食品など酸性食品の多い現代では、強い酸性を中和してくれるアルカリ性食品・梅干しは貴重な食品である。・・・と、梅干しは掛け値なしに良いこと尽くめの優良食品なのです。今年は久しぶりに自家製梅干しをいただいて、まだまだ続く残暑を元気に乗り切ろうと思っている。(2007・9・8)

「青春日和」トップ