アンドレのフォト・エッセイ「青春日和」No.9

“これでいいのか?日本の食糧事情”

我が家の家庭菜園
拡張工事が完成した我が家の2号菜園。ミニトマトは早くも花が咲き始めたが、
オクラは5本中4本も枯れてしまった。自給自足は簡単ではない。

どこかで毎日3万人の子どもたちが食べ物がなくて死んでいます。世界のどこかで毎年東京の人口とほぼ同じ約1千万人の子どもたちが食べ物がない為に死んでいるのです。特にアフリカやアジアの貧しい国々では飢えて死んでいく人が沢山います。やせ細った子ども達の写真を見たことがあるでしょう。全世界では5人に1人は十分に食糧が手に入れられず飢えていると言われます。一方で、毎日贅沢な食事をしている国があります。私たち日本人は毎日のように魚やエビや牛肉などを食べています。天候が悪くて米や野菜が不作でも、食べ物に困ると言うことはありません。ハンバーグやスパゲッティ、ピザやスキヤキなど、何でも好きなものをいつでも食べることが出来ます。また、パイナップルやバナナ、コーヒーなど、日本では採れない物も沢山食べています。私たち日本人はこのグルメな食生活を当たり前のように疑うことなく生活しています。

牛や豚やニワトリを育てる為には、エサとしてのトウモロコシなど穀物を沢山必要とします。1キロのニワトリを育てる為には約3キロのエサが必要です。鶏肉を食べると言うことは3倍の穀物を食べることと同じです。更に豚肉は5倍、牛肉は8倍の穀物を食べていることと同じです。あなたが飲むビールやお酒も、米や小麦などの穀物を大量に使って作られます。この穀物があれば一体何人の人が飢えずに済むでしょうか。日本人に魚は欠かせないものです。最近は養殖の魚も多くなっています。養殖のマグロやハマチなどは、獲ってきたイワシなどをエサにして育てます。ですからマグロやハマチ、ブリなどは、イワシなどの小魚を10倍近く食べているのと同じなのです。

他の先進国の食糧自給率は殆んど100%以上ありますが、日本は公表では40%です。穀物に限っては30%を切っているという話もあります。世界の中でも100番以下の低さと言うお粗末な現実です。それでも主食のお米を作らないという減反政策を行っています。日本中いたるところで休耕田が目立ちます。大量に作った工業製品を売ったお金で海外から安い食糧を輸入すればよい、という政策を進めています。自分の国で主食を自給できないようにしている国は他にはありません。しかも、近年は繊維製品や家電製品の殆んどが人件費の安いアジアの途上国で製造しています。農業技術も工業技術も日本からどんどん失われています。もし、何らかの理由で食糧輸入が止まった場合は国民に食糧供給が出来なくなることは明らかです。

40〜50年前の日本では、その地域で採れた野菜や少しの魚と、味噌汁、漬物とご飯が普通の食事でした。今では肉や油物が主流の欧米風の食生活になっています。もともと日本国内で生産されていたもので自給自足できていたのです。しかし、今の食事の材料を見ると日本で作られたものが殆んどありません。家に大型の冷蔵庫や電子レンジが入り始めたのは今から30〜40年前です。この頃から野菜や肉など長距離で運ばれることが普通になりました。高速道路ができて流通が発達したのも大きな要因です。日本国内だけでなく、海外からもあらゆる物が輸入されるようになりました。

今の多くの食材は海外から長距離を運ばれる為、昔に比べて新鮮でなくなり痛みやすくなって、食べずに捨てる量も多くなっています。東京で毎日捨てる残飯の量は6千トンにもなり、アジアで普通に生活している人たちの500万人分の食事を毎日捨てているのと同じです。また防腐剤などの添加物が大量に使用されるようになりました。私たちが免疫低下やアレルギー体質に苦しむようになったのも、これら化学薬品漬けの食品を多くとるようになったことと無関係とは言えません。私たちが便利で快適だと思っている生活が、私たちの健康を害し、未来を奪うことになっているのです。

日本に住んでいる人は世界の人口の2%に過ぎないのに、日本で消費している資源の量は世界の10%近くにもなっています。もちろん日本だけではありませんが、世界のたった2割の先進国の経済拡大や大量消費が地球の自然を破壊し、世界中の国々で自給自足の崩壊、地球規模の環境問題を引き起こしています。日本や先進国が食糧や資源を輸入している途上国でも、同じように経済発展を望むようになりました。出来るだけ高く買ってくれる商品を栽培しようと、森や自分たちの食べている畑をつぶして、より付加価値の高い商品を栽培しようとしています。食糧だけでなく、珍しい動物や植物もとられ、生態系も崩壊し、森や山、生き物、生活の基盤がどんどん失われています。物質優先主義、経済優先主義の考えを反省する時期にきているのではないでしょうか。

さて、振り返って我が家の最近の食糧事情を見てみると、「青春日和」NO・2で書いた、庭を改造して家庭菜園を拡張する工事が4月中旬に完成し、何とか春の野菜の苗の植え付けに間に合いました。拡張と言ってもせいぜい2坪の畑が4坪ほどになっただけですが、遂に我が家は増反政策を果たしました。団地近くの某園芸店は野菜の苗が豊富なことで結構有名なので、連日野菜の苗を買いに来るお客で大盛況です。ナス、トマト、キュウリ、オクラ、カボチャ、インゲン、ピーマン、トウモロコシ、ゴーヤなど、いろいろ植えてみました。はたして無事育ってくれるか心配です。これで自給自足体制も万全と言いたいところですが、水と肥料をやって3ヶ月は待たないと結果は分かりません。

自給自足はあくまで夢の話、現実はそれほど甘くありません。最近は10日に一度ほど、車で30分ほど北へ走った、農家が協同経営しているスーパーマーケットに野菜を買いに行くのが恒例になっています。地元のプロの農家が作った、農薬を殆んど使わない、しかも朝採りの新鮮な野菜が値段も安いとあって、こちらも結構人気があって盛況です。農家も高齢化で大量栽培が難しくなったこと、朝早く起きて商品を市場に出荷するのが大変になったなどの理由で、農家同士が協力し合って直接販売するスタイルが流行してきたようです。最近は我が家も殆んど野菜中心のメニュー、しかも産地には注意を払って、地産地消、旬のものを買うように心掛けています。間違ってもスーパーでの外国産は買わないようにしています。やはり毎日の食生活が健康の一番の基本だと思います。(2007・5・12)

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