アンドレのフォト・エッセイ「青春日和」No.6

“「つぶ食・いしもと」訪問記”

つぶ食

朝から気持ちの良いお天気に恵まれた3月10日の土曜日、友人のW氏に誘われて仲間4人で水窪町の農家レストラン“つぶ食・いしもと”に昼食をいただきに行って来た。W氏は既にN氏を乗せて約束の9時10分キッカリに銀行の駐車場に迎えに来てくれた。途中都田テクノパークでO氏を乗せて、ひたすら水窪まで天竜路を北上した。昔は3時間ほど掛かった約70キロの水窪までの道のりは、新しいトンネルができたり、若い時は暴走族も黙る?ほどのW氏の運転テクニックで11時半前には目的地に着いてしまった。普段は相変わらずバイクを乗り回すW氏はとても70歳を過ぎているとは思えない。以前水窪方面にドライブした時に偶然このレストランを知ったと言うW氏は、今日が3回目の訪問だそうだ。シェフ石本静子さんは料理の準備で忙しく、出てこられた石本さんのご主人に、「だだ今到着しました」と告げて、近くの高根城跡を訪問して時間をつぶすことにした。時の大名今川氏から土地の支配を認められた、地元の領主、奥山氏が15世紀前半に築いた城跡である。水窪町の町が一望できる眺めの良い山の頂上にあった。途中道を間違えて倍の距離を歩いてしまった。

12時丁度に“つぶ食・いしもと”に戻った。民家の正面玄関の「いしもと」と書かれた白い暖簾をくぐって中に入ると、真正面に囲炉裏があった。早速囲炉裏の席にご馳走が並べられた。地元で獣医師をされている娘さんが料理を並べてくれた。お休みの日は、いつも実家のお手伝いをしている親孝行な娘さんである。予約した料理は2,000円の雑穀料理コース。ごはん、おそば、アワドレッシングのサラダ、コンニャクとシイタケのクルミ和え、香の物、コンニャクのお刺身味噌ダレ、手作りヒエケーキ、キャラブキ、さらにオードブルと称して、大皿にタカキビのハンバーグ、ヒエの白身魚風フライなど12品の揚げ物。囲炉裏のテーブルが一杯になって、とても2,000円のお料理とは思えない、それはそれは豪華なご馳走が並びました。高根城跡散策を、道を間違えて五策もしてしまってお腹が空いていた私は、1時間ほどゆっくり時間を掛けて、ご飯をお代わりして全て残らずいただいてしまった。イメージしていた雑穀料理などとは違い、美しい姿の上品な味わいの料理の数々にビックリした。食事が済んだ後、オーナーの石本静子さんにいろいろお話を伺った。


右端、石本静子さんの隣が不肖私。

初めてお会いした石本静子さんは気さくな農家のおかみさんといった、可愛らしい感じの女性だった。水窪町で雑穀料理教室やそば打ち、草木染めなどの活動をしているグループ「お茶の子彩彩」のリーダーでもある。平成18年の文化の日に、雑穀料理の普及などの尽力に対し知事表彰を受賞されている。1995年、農林水産省主催の「グリーンツーリズム指導者研修会」に参加した時に「民家を利用した農家レストラン」の夢をレポートに書いたのがきっかけで、2003年6月に夢を実現して、築後100年という自宅で「つぶ食・いしもと」としてオープンしたしまった。東京へ雑穀料理の研究をしている先生のもとに通ったり、地元へ先生を招いて講習会をしたりして勉強をしたと言う。昔から慣れ親しんだ雑穀の料理はすんなりと学ぶことが出来たそうだ。メニューは先祖が江戸の中期に残した日常の献立表を元にした伝統の料理だそうである。

雑穀とは、米、麦、トウモロコシなどのメジャーな穀物に対して、アワ、ヒエ、キビ、モロコシなど、マイナーな穀物の総称である。つぶ食とは、雑穀を使った料理のこと。粉にせず、粒のまま使うことが多いので“つぶ食”と呼ばれる。乾燥や寒冷地、山間など、やせた土地でもよく成育し、病害虫に対して抵抗力が強いため、農薬を必要としないこと、また繊維やミネラルが豊富なことから健康に優れた食品である。はじめ名前を考えた時、「雑穀食」にしようと考えたが、県知事にお話したら、「雑穀は粗末な食事のイメージがするから、<つぶ食>のほうが良いのでは」、との意見をいただき「つぶ食・いしもと」に決めたと言う。確かに「つぶより」とか、「つぶぞろい」など、こちらのほうが響きが良い。

石本さんは、農家レストランの魅力について、こんな事を話しています。「自分が畑で育てたヒエやアワなどを収穫、調整して料理出来ること。買った物ではなく、自分が愛情を持って育てた雑穀の1粒1粒が料理になっていくことが醍醐味です。農家レストランを開いていると、お客さんに“美味しかったよ”と言って喜んでいただくと、畑での草取りなどの苦労が吹き飛んでしまい、何にも変えがたい喜びであり幸せです。」・・・・・また、今後の目標として、「食事の提供だけでなく、お客さん同士、お客さんと私の交流の場にしたいと言う目的もあります。出来れば100歳まで頑張ってお店を続けたい。仲間達と一緒に語らいながら、本当に生涯現役で健康でいたい。江戸時代から家に伝わる春夏秋冬の献立表の文字の解読がまだ途中で、材料として載っている野菜の中には今では水窪で作られなくなっているものもある。それらを克服し、江戸時代の献立表を完璧に再現したい。いろいろなことに携わっていける環境にいられることは幸せだと思う。農家万歳です」・・・・きっと石本さんなら100歳まで頑張れると思います。

お話が終って玄関先で石本静子さんを囲んで記念写真を撮った。また何回でも家族や友達を連れて訪れたくなるお店である。わざわざ水窪まで足を運ぶ価値のあるお料理だと思います。最も水窪は今では浜松市内ですけどね。是非皆さんも訪れてはいかがでしょうか。「つぶ食・いしもと」は予約が必要です。下記のURLにアクセスして予約してお出かけください。きっと感激して満足される筈です。(2007・3・30)

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