アンドレのフォト・エッセイ「令和つれづれ草」No.120

「香り松茸味しめじ」

マツタケ

秋の味覚の王様と言えば、庶民には高値の花の「松茸」でしょう。しかし、今年は記録的な猛暑に加え雨が少ないことで二十数年ぶりの不作だという。

松茸の生産量が日本一の長野県のある道の駅にたまたま行ったら、並んでいました松茸がほんの少々。小さな松茸が1本1万5千円前後、最後に残った少し立派なのは1万9千5百円の値が付いていました。いったい誰がこんな高級な食材を買うのだろうかと少し見ていたが、みんなチラッと覗いて呆れて苦笑いして通り過ぎるだけ。

「香り松茸味しめじ」という言葉がある。所詮松茸は香りだけ、味はしめじの方がよいとう諺だ。実際その通りなのだが、しかし、ここでいう「しめじ」は「ホンシメジ」のことで、秋に松の中で生える天然もののこと。現在市場に出回っている「シメジ」は「ブナシメジ」で、栽培したヒラタケのことだ。

スパーやネット通販で「松茸ご飯」「松茸釜めし」「松茸のお吸い物」など、何でも格安で手に入る。しかもちゃんと松茸の香りがするのだ。N食品会社の「松茸の味お吸い物」は、もちろん松茸香料を科学的に合成したものだが、贅沢を言わなければ庶民はこれで十分秋を味わえる。

このところ年齢のせいか、コロナの影響か、もともと衰えていた嗅覚がさらに衰えて鼻先にくっつけないと折角の松茸の香りがほとんど脳まで伝わらない。・・・という言い訳をして、本物の松茸は今年もただ見るだけです。(2023.11.12)

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