アンドレのフォト・エッセイ「令和つれづれ草」No.107

「ベニバナトチノキ」

ベニバナトチノキ

アクト通りを歩いていたら赤いきれいな花が咲いている大きな樹木があった。木の幹に付いている名札を見たら「栃の木」と書いてあった。「あの栃の実のなる木なのか」と思って、家に帰って調べたら、栃の実のなる木の花とは色も形も少し違っていたので、更に調べたら「ベニバナトチノキ」の花だと知った。

ヨーロッパ原産のセイヨウトチノキと北アメリカ原産のアカバナトチノキとの交配種とあった。セイヨウトチノキはフランス語名でマロニエとして親しまれ街路樹としてよく見かける。5月から6月に赤い花が咲き、今まさに花の真っ盛りだ。花の後にできる果実は、残念ながら日本のトチノキのようには成熟しないという。

トチの木の由来は、トは「十」、チは「千」を表し、たくさんの実が生るという意味があると言う。種子は蛋白質を豊富に含み、縄文時代の遺跡からも出土され、江戸の飢饉や戦後の食糧難には庶民の貴重な栄養源となり、嫁入りの財産にした地方もあったという。文字通り栃木県の「県の木」だが、トチの実は実るのに3代かかり、植えてもすぐには収穫できないため「トチを刈る馬鹿、植える馬鹿」という諺があるとか。

トチの実は見た目は栗にそっくりだが、サポニンやタンニンといった毒性の物質を多く含み、そのまま茹でてもあくが強くて食べられないので、十分なあく抜き作業が必要な手間のかかる食材だ。「栃餅」や「栃の実せんべい」など今でも人気があり、私も信州にドライブ旅行に行くと必ず買ってくる人気のお菓子だ。

トチノキ材は建材としては劣るものの、広葉樹としては柔らかく加工しやすいため、木目が美しくケヤキに並ぶ人気があり家具や盆、椀などの伝統工芸品に使われ、特に蕎麦粉を練る木鉢として特に好まれるという。

何にでも興味を持ち続けることがボケ防止には良いとのことで、今回もいろいろ勉強させていただき物知りになりました。(2023.5.14)

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