アンドレのフォト・エッセイ「令和つれづれ草」No.96

「名木・巨木めぐり」

名木・巨木

私の好きなテーマに「名木・巨木めぐり」というのがある。種類も「天然記念物」「史跡」「保存樹」「保存樹林」「景観重要樹木」などがあり、浜松市では中区から天竜区まで191カ所が指定されている。例えば、天然記念物では八幡宮の「雲立のクス」や鴨江の「根上がり松」。史跡では「東海道の松並木」「姫街道の松並木」。保存樹林では「縣居神社の樹林」「普斎寺の樹林」などはよく知られている。

樹木の多くはお寺やお宮の境内だが、「保存樹」は個人のお宅の樹木も多い。そうしたお宅では「市の保存樹」に指定されたけど管理が大変なようだ。市内のある個人宅の保存樹を訪問した。そのお宅の保存樹は樹齢100年のムクノキだ。個人のお宅は資料に番地まで表示されていないので、探すに少し苦労する。昔は畑の中に立っているひと際目立つ存在だったが、今は周りに住宅やマンションが建っていたりして分かりづらい。それでも遠くからすぐに分かるほどの大木だった。お宅の裏庭にあるその大木を近くで見たいが、無断で敷地内に入るわけにもいかず迷っていると、ちょうどタイミングよく玄関から出てきた奥さんにお断りして見せていただき、保存樹管理の苦労話などを聞くことができた。

「大きいだけで名木でも何でもないわよ、あなたこの木切ってくれない。台風で倒れてくれればいいのにね」・・・80代とおぼしきその奥さんは、いきなり私にそんな愚痴を言ってきた。「昔はムクドリがたくさん来て大変だったのよ、今は来ないけどね。根っこが隣の屋敷にまで張っているのよ」と30メートル先のマンションの駐車場を指さした。「落葉樹だから秋になると落ち葉で大変なのよね。早朝隣のマンションの敷地に落ちた葉を片付けに行くのよ。この木の落ち葉だけでゴミ袋が20袋ぐらいあるんだから」・・・愚痴はまだまだ続く。

ムクノキの下に葉っぱが青々とした立派な柿の樹が2本あった。「昔はこの柿の木に美味しい実がたくさん生ったけど、ムクノキのお蔭で太陽が当たらなくなって全然実が生らなくなってしまったのよね」「この間、この木なら200万円で切ってあげるよ、という業者がいたけど、市に無断でそんなことできないしね。年間1万円の補助金をもらっても管理が大変なのよ。台風で倒れてくれないかね」と、また言われてしまった。こんな大木が台風で倒れたら住宅も壊れてしまう。でも気持ちは本音と感じた。(2022.12.10)

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