アンドレのフォト・エッセイ「令和つれづれ草」No.93

「442年ぶりの天体ショー」

皆既月食

特に天体観測に趣味はないが、442年ぶりと言われれば無視できない。11月8日の皆既月食は一生に一度あるかないかの特別な現象だという。今回は天王星が月に隠れる惑星食が同時に見られるというのだ。「皆既月食と惑星食」が重なるのは織田信長が活躍していた安土桃山時代の1580年以来442年ぶりだというから急に興味が湧いてきた。

時間帯も18時過ぎから20時過ぎまで、お天気は快晴の絶好の観測日和となればなおさらだ。こんな好条件が揃うのはめったにないことだ。せっかく揃えた月撮影モード搭載の2000mm超望遠ズームレンズを備えたNikon一眼レフカメラを2階のベランダ越しに三脚を立てて構えた。

夕食を済ませて早速カメラの前に腰を据えて電源を入れるとすぐに、18時過ぎからカメラの液晶画面に鮮明に映った月が左下から少しづつ地球の影で暗くなり始めた。7時5分過ぎには月全体が地球の影に覆われて暗くなり、やがて赤くなってきた。光の屈折で地球の影が赤くなるらしい。天王星らしきものが左下にポツンと明るく点のように見えたが肉眼ではよく分からない。

月を写真に撮ってわかったことは三脚を立ててカメラを固定すれば簡単に撮れると思っていたのは大間違いだった。月も地球も自転で少しづつ動いているのだ。しかも2000mm超望遠になると画角が極端に狭くなるので、カメラが少し動いただけで画面から月が消えてしまう。もう一つ失敗したのは、節電モードがONになっていると、待機している間に電源が切れてしまうことだった。月の撮影の時は節電モードはOFFにしないとやりづらかった。

皆既月食が終わって再び明るい月が戻った21時過ぎまで撮影し続けて、さっそく画像をパソコンに取り込んで確認したら意外に綺麗に撮れていて満足だった。今まさに月に隠れんとする天王星も月の左わきにしっかり写っていた。次回に皆既月食と惑星食が同時に起こるのは322年後の2344年7月26日で、今度は土星食だそうだ。当然今の人間は全員生きていないが、その時まで地球上の人類が無事生きているかどうかは知る由もない。地球温暖化がますます進んで気候変動がさらに激しくなる。あるいは核戦争が起こって人類は滅亡しているかも知れない。懸念材料はたくさんある。(2022.11.12)

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