アンドレのフォト・エッセイ「令和つれづれ草」No.90

「高級魚サンマ」

サンマ

サンマは漢字で「秋刀魚」と書く、まさに秋の味覚の代表だ。昔から日本ではサンマを炭で焼くモクモクとした煙と食欲を誘う香りで秋を感じた。塩焼きを大根おろしと一緒に醤油を掛けて、ハラワタと一緒に食べるほろ苦い味が懐かしい。値段も1尾100円前後と、まさに秋の庶民の食卓の代表だった。

しかし、近年のサンマは高級魚になってしまったので、なかなか庶民の口に入らない。今年7月の釧路港の初サンマ漁の水揚げはたったの24匹、一尾1万3200円の豊洲市場のご祝儀相場だった。誰が買ったかは知らないが、これはあくまでご祝儀相場で、庶民には関係のない話だ。

50年前の1972年の値段は一尾50円、1982年が130円、その後も大体100円前後だったのに、どうしてこんなに高くなってしまったのか?。漁獲量が2008年のピーク時に比べ昨年は10分の1以下だという。地球温暖化で稚魚が十分成長しない、海流の変化で泳ぐルートが変わって来遊量が減少した。中国などの外国船に早めに獲られたり、ウクライナ情勢でロシアの国境付近には近づけない。燃料代の高騰で遠くの漁場に行けないなど、様々な要因があるようだ。

 

今年の庶民のサンマ事情はどうなったのか。9月の初めにスーパーへ行ったら、あまり脂がのっていない小ぶりの北海道産サンマが2尾540円と出ていた。高くても1尾130円前後の感覚があるので、あまりの値段の高さに「べつにサンマを食べなくても死にませんから買いません」・・・とかみさんに言われてしまった。主婦感覚では大衆魚の1匹200円以上は拒否反応が出てしまうらしい。男としては高くても一度は秋の味覚を味わいたいものだと思っていたが、この日の夕食は金目鯛のいい色の干物が1枚398円であったのでこれで我慢した。1枚あれば2人の食卓には十分な大きさの立派な金目鯛で、脂ものっていてこれはこれで美味しかった。

その後10月になってスーパーの魚コーナーを覗いたら、2尾298円と庶民価格になっていたが、どう見ても脂ののっていない小さな痩せたサンマで食欲が出なかった。若い奥さんが魚屋の店員に「頭とお腹を取ってください」と言っていたが、多分サンマを煮魚にするのだろう。やはり光輝高齢者の年代は脂ののった塩焼きのサンマが最高だ。東京目黒のサンマ祭りも3年ぶりに開催されたが、従来5千匹を千匹に減らしての開催だった。量も減ったが、痩せた小さなサンマで格段に質が落ちてしまっていた。(下手なサンマの絵を描いてみました)(2022.10.16)

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