アンドレのフォト・エッセイ「令和つれづれ草」No.86

「巣立ち間近」

ツバメ

愛知県の、ある道の駅の軒下で巣立ち間近のツバメのヒナたちに遭遇した。ツバメは北半球の広い範囲に生息し、日本では屋久島以北で繁殖し古くから人間社会と共存関係にある。必ず民家など人工物の軒下などに泥と枯れ草を唾液で固めて巣を作るが、あえて人間の往来が多い場所に見えるように作るのはスズメなどとは大きな違いがある。カラスなどの天敵が近寄らないからだといわれる。だから余計に人間に親しまれ愛される所以である。

日本では水耕栽培の穀物の害虫を食べてくれる益鳥として、古くから殺したり巣やヒナに悪さをすることは禁じられるなど、農村部で大切に扱われてきた。「人の住む環境に営巣する」という習性から、人の出入りの多い家や商家などでは、商売繁盛の印として、またツバメの巣のある家は安全であるとの言い伝えがあり、巣立った後の巣を大切に残しておくことも多い。

渡り鳥なので春に東南アジアから飛来して春から夏にかけて繁殖し、秋には再び東南アジアへ渡っていくが、そのまま日本で冬を越す「越冬ツバメ」もいる。巣は通常新しく作るが、古い巣を修復して使用することもあるようだ。産卵期は4〜7月で、1回に3〜7個で年に2回産卵することもある。主にメスが抱卵し、卵から20〜24日で羽化して巣立つが巣立ち率は50%程度だというから、やはり自然界は厳しい。この日は4羽のヒナが元気に育っていた。トンボやアブなど飛ぶ虫を空中で捕食するが、時速200キロ近くの高速で飛ぶこともあるという。ツバメが低く飛ぶと天気が悪くなると言われるが、湿度か高くなると昆虫の羽根が水分で重くなり低く飛ぶので、ツバメも低く飛ぶようになるからだという。

そんなツバメも最近は繁殖数が少なくなっているという。農業の衰退による宅地化や水田耕作地の減少、ツバメの餌となる昆虫の減少、民家の軒先もなくなるなど巣を作る環境が少なくなった。また、一般民家などでは糞の落下問題で敬遠されるのは致し方ない。気象条件の変化や環境問題など、地球上のあらゆる生きものの生活環境が悪くなってきているのが気がかりだ。(2022.8.28)

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