アンドレのフォト・エッセイ「令和つれづれ草」No.81

「バナナの想い出」

バナナ

我が家の朝食はパン食なので、いつ頃からの習慣かいつも刻んだバナナの入ったヨーグルトが出てくる。朝食にバナナを食べると、寝ている間にエネルギー不足になっている身体の回復や腸内環境の改善に期待できるという。特に脳のエネルギー補給に必要なブドウ糖などの糖質や、腸内環境を整える植物繊維が多く含まれているので、朝食にヨーグルトとバナナは良いらしい。胃腸の調子がいつも快調なのは、このバナナ入りヨーグルトのお蔭かも知れないが、脳の回転が少し鈍ってきたのは年齢のせいで、バナナの効力も及ばなくなったか?

ところで、バナナには懐かしい思い出がある。今から70年も前の、小学校低学年の頃のむかしむかしの話しである。バナナはとても高価な果物だった。近所の八百屋さんの店先に茶色になったバナナが1本づつ数本並んでいる程度だった。なかなか売れないので熟し過ぎてしまったバナナ1本の値段がとても高価で庶民が気軽に食べられる果物ではなかった。病気になった時か、遠足の時に母親にねだってやっと食べることができる超高級な果物だった。

バナナの輸入は台湾が日本の統治下にあった明治35年からだったというが、戦争を挟んで輸入が再開したのは昭和23年だという。私が小学校に入った頃の当時のバナナの値段がいくらくらいだったか調べてみた。昭和23年(1948)のバナナ1本の値段が約50円、当時のうどん・そばが1杯15円の時代である。現在の感覚で計算すると、今の普通のうどん・そばの値段が600円とするとその3倍強の2000円ということになる。とてもおいそれと庶民の口には入らない高級メロン並みの果物だったことがわかる。

昭和38年にバナナの輸入が自由化され、次第に値段も下がっていった。今ではスーパーに行けば店先の特売コーナーで山のように積まれている。ひと房5本のバナナが298円くらいで売っていて、1本50円ほどの値段である。70年前と同じ値段で1本2000円の時代の40分の1の値段である。こんなに安くて美味しく栄養価のある果物はない。・・・と思っていたら、最近、生産国のフィリピンで生産コストが厳しくなったとの理由で値上げの要請が出ているとのニュースがあった。なんでも値上げの今、消費者にとってはできるだけ安いほうが嬉しいのだが。(2022.6.26)

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