アンドレのフォト・エッセイ「令和つれづれ草」No.65

「忘年会って何?」

居酒屋

今の若者世代の間では、忘年会や新年会といった、我々旧世代の当り前だった日常生活習慣が大きく変わってきているという。我々の時代は大人のコミュニケーションは飲みニケ―ションが当たり前で、コロナ禍前なら年末になると、いろいろなグループの忘年会が毎週のように少なくても3つや4つはあったものだ。

飲ん兵衛ではないおじさんでさえだから、お酒の好きなあなたなら5つや6つはあったかもしれない。何か理由を付けて飲んでいただけなのかもしれないが、飲んで本音で語り合うのは大人に必要な行事で、日頃のストレス発散には精神医学的にも有効な手段である。・・・とおじさんは思っている。

アンケートを取ると若者の半数以上はそんなものには参加しないと答え、企業の7割以上が計画していないという。そもそも「そんなものは必要ない」というのが、最近の若者の常識になってきている。結婚式も挙げない、葬式も家族だけでひっそりと、がこれからの社会常識化しつつあるのだ。コロナ過でそんな世相に更に拍車がかかったようだ。コロナが治まっても昔のようには戻らないだろうというのが、大方の見方だ。

コロナ禍と言えば、入学した時からマスク姿の中学生や高校生は、「3年間友達の顔をまともに見たことがなかった」ということになってしまう。かわいい孫の世代に当たるこんな時代に育った若者の将来にコミュニケーション力が身につくのだろうかと心配になる。

理不尽なあおり運転をする男、電車の車内で放火する若者、つい最近では大阪のビルの放火事件など、痛ましい事件のニュースを見るにつけ、コミュニケーション力不足や心の健康を失った人間が多くなったとことが心配なのはおじさんだけではないと思うが。・・・やがて「忘年会って何?」と質問される時代が来るかもしれない。

12月のある土曜日の夜、ヤマハビルへ恒例のプロのギタリストの演奏会を聴きに行った時に久しぶりに夜の有楽街を歩いた。若者の姿は平日よりは多かったものの、忘年会の最盛期なのに以前ほどの賑わいはなかった。軒並みあった居酒屋が撤退して明かりが消え、入居者募集の看板が貼ってあるビルもあちこちに目立っていた。果たしてコロナが終息しても、再び以前の賑わいが戻ってくるのだろうか。(2022.12.19)

「令和つれづれ草」トップ