アンドレのフォト・エッセイ「令和つれづれ草」No.63

「心身一如と東洋医学」

自律神経

昨年9月に私の音楽仲間が自律神経失調症でアンサンブル活動を長期欠席中だった男性が、1年ぶりの今年11月に無事に回復して元気に現役復帰を果たしてくれた。彼の1年間の闘病生活の苦労話を聞いた。

昨年夏の猛暑の中で100歳の母親の葬儀と一連の法事を無事終え、ほっとした9月に突然体調を崩して体重が激減し、気力・体力を失って長期療養生活に入ってしまった。医師の診断では「自律神経失調症」、病院の精密検査では「どこも悪いところはありません」との結果だった。つまり、自律神経のバランスが狂ってしまったのだ。検査の結果どこも悪いところがなければ、一般の病院の西洋医学では治療の方法がない。

彼は一時期気力・体力が全くなくなって、外へ散歩にも行けなくなった。趣味の釣りも全くやる気がなくなって、釣り道具一式をすべて処分してしまったという。好きだった音楽も聞こえてくると気持ちが悪くなってしまう状態だった。このまま体力も気力もなくなってうつ状態が長く続くと再起不能になる恐れがある。

そんな彼が3か月を過ぎたころ、このままでは自分がだめになってしまうと悟り、絶対に治ると信じて、この病気は西洋医学では治らないと考え、東洋医学の勉強を始めた。西洋医学では心と体を切り離して病気の治療をするが、東洋医学では、心と体は一体であるという「心身一如」の考え方が基本にある。「病は気から」も「心身一如」に通じる言葉で仏教の教えに相通じる。恐怖や怒り、悲しみやストレスなどがあると、体にも力が入りやすく、ちょっとした刺激でも過敏に反応してしまう。この状態が続くと自律神経のバランスが崩れ、様々な体調不良を引き起こし、心も不安定になって弱ってくると食欲不振やアルコール依存にも陥りやすくなる。まさに彼はそんな状態だったようだ。

彼は東洋医学の勉強で得た知識を毎日実践した。@腹式呼吸で深呼吸、4で吸って10でゆっくり吐く。A散歩に出て太陽を浴びる。B40度以下の風呂に15分ほどゆっくり浸かる。C睡眠をしっかりとる。D栄養バランスの取れた食事をする。・・・このような規則正しい生活を毎日続け、生活のリズムを取り戻すことに努力した。ほかにもツボを刺激する様々な治療法も実践したが、基本は以上の5つだという。特別なことではなく、基本的な生活の継続である。こうして6か月を過ぎたころ少しずつ体調が戻って、好きだった釣りにも行きたくなって再び道具を揃えたという。東洋医学は心と体のバランスをじっくり時間をかけて直すので、元の体に戻るのに1年もかかってしまった。最後に彼は「医師が処方する抗うつ剤や精神安定剤などは絶対に飲んではいけない」とも付け加えた。

今年9月に彼から突然久しぶりに「おかげで元気になったので、10月頃からアンサンブルの練習に参加します」とのメールが入った時は、とてもビックリして嬉しかった。私も東洋医学に興味が湧いた。(2021.11.28)

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