アンドレのフォト・エッセイ「令和つれづれ草」No.61

「昆虫界の人気者・カマキリ」

カマキリ

子どもの頃は、学校から帰るとセミやトンボ採りに夢中になって遊んだものだ。そんな子どもの姿も最近はあまり見かけなくなってしまった。いまでは昆虫の姿を見ることも少なくなってしまったので、見つけると嬉しくなってしまう。久しぶりに庭でこんな立派なカマキリに出会って懐かしくなってしばらくじっくり観察してしまった。

生きた獲物を大きな鎌でしっかり捕らえ、むしゃむしゃと食べてしまう昆虫界の「ハンター」。大きな眼の三角形の顔と体をそらして鎌を振り上げ威嚇する姿は、昔から子どもたちの人気者だ。カマキリの名前の由来は「鎌で切る」と「鎌を持つキリギリス」の説があるがキリギリスの仲間ではない。カマキリの鎌は切るための武器ではなく、獲物をしっかり捕らえるためのものだ。

カマキリを見つけるなら花の周りを探せという。花の下で自分の体を葉や枝に擬態化してジッとしている。花の蜜を吸うわけではないカマキリが花の周りにいるのは、花にやってくる虫たちを待ち伏せして狩りをするからだ。カマキリは獲物を追いかけるのではなく、いつも待ち伏せ作戦である。

カマキリが捕食するのは生きた餌に限られ、死んで動かないものは基本的に食べない。ハチやキリギリス、バッタやトンボ、クモにカエル、トカゲなど何でも食べてしまう。前足の鎌ですばやく獲物を捕らえて大きな顎でかじって食べる。食後は前足を念入りになめて掃除をする。

秋になるとカマキリの頭のなかはふたつのことでいっぱいになる、食べ物と交尾だ。獲物が少ない時は体の小さいオスが体の大きいメスに共食いされてしまうこともあるという。交尾の際もメスに不用意に近づくと交尾前に食べられてしまうので、慎重にメスに近づいて交尾まで持ち込む。オスはメスに頭を食べられても交尾行動は続けられ、食べられたオスの栄養はしっかり卵の栄養となって子孫に引き継がれる。何とも恐ろしい昆虫の不思議な世界であるが、メスがオスを食べてしまうのは、自分より小さな動くものは何でも獲物に見えてしまうという習性からだという。

泡状の卵鞘から春に孵化したカマキリは100から300匹ほど。ほとんどが他の昆虫の餌となって、無事成虫に育つのはわずか2〜3匹。脱皮を繰り返し、幼虫の頃から狩りを行い生涯を通じて獲物を捕獲し続けて、秋に交尾・産卵して冬を越さないで生涯を閉じる。わずか数か月の命である。(2021.11.14)

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