アンドレのフォト・エッセイ「令和つれづれ草」No.45

「音楽仲間二人に起きたこと」

体重計

昨年の夏は異常なまでに暑かった。なにしろ8月17日には浜松市中区で日本一タイ記録の41.1度を観測した。そんな猛暑の8月に音楽仲間のT氏(78歳)は100歳を迎えたばかりの母親が亡くなった。長男の彼は、葬儀や一連の法事を気力で無事滞りなくやり遂げてほっとした9月、急に体調を崩してしまった。食欲がなくなり体重が減って午前中は何とか起きていられるが午後まで体力がもたないという。病院での精密検査では「何も悪いところはありません」との診断だったという。病名は「自律神経失調症」と宣告された。それ以来音楽の練習はずっと休んでいる。

もう一人の音楽仲間K氏(81歳)は人一倍健康には気を使って、毎日地元の有志がやっている早朝ラジオ体操に行ったり、自宅の田や畑の仕事を精力的にやっている。きっと真夏の猛暑の中でも農作業に汗を流したに違いない。そんな彼が11月に2週間で5キロ以上痩せて体調を崩したとの連絡で急に音楽の練習に来なくなった。精密検査の結果はやはり「どこも悪いところはありません」とのことだったという。症状を聞くとT氏の症状とまったく同じ、自律神経のバランスが崩れてしまったようだ。

血液循環や呼吸、食物の消化吸収、体温調節など、生命を維持するための機能をコントロールしている自律神経は自分の意志ではコントロールできない。交感神経と副交感神経から成り、車に例えればアクセルとブレーキのバランスで身体を健康な状態に保っている。ところが、生活上の様々なストレスでバランスを崩すと深刻な病気を引き起こしてしまう。原因はさまざまで、彼らの場合は猛暑ばかりではなく、コロナ自粛による生活リズムの変化も関係しているかも知れない。神経の乱れは病院で検査しても原因が分からないので特効薬はない。

後期高齢者になると、様々な要素が複雑に絡んで身体のバランスを崩してしまう。昨日まで元気な人が急に体調を壊したりする。自分は大丈夫と思ってもやはり後期高齢者、過信は禁物だ。いつまでも光輝いていたいと思うが、何時そうなるかも知れないことを肝に銘じたい。あれから既に半年にもなるのに、まだ二人の元気な姿は戻っていない。今年もまた昨年のような猛暑の夏がやってくるのだろうか。(2021.5.8)

「令和つれづれ草」トップ