アンドレのフォト・エッセイ「令和つれづれ草」No.39

「遠州灘防潮堤」

遠州灘防潮堤

東日本大震災から早くも10年が過ぎた。毎年3月になるとテレビ番組もこの話題が多くなる。今年は10周年ということでテレビ各局も特別番組を組んだり、新聞も特集を掲載している。まさか人生の中で千年に一度の大震災を目の当たりにするとは思いもよらなかったが、現実に起きてしまった。

あの日はちょうど昼食後の日課の佐鳴湖公園ウォーキングから帰って来て、コーヒーを飲みながらテレビを見ていた時だった。午後2時46分、突然グラグラっと来てあわてて思わずテレビを手で押さえていた。浜松でも震度3以上はあったように記憶している。東北地方の方たちには申し訳ないが、こちらは被災しなくて本当に良かった。

この大震災を契機に太平洋に面した日本の各地では巨大津波への備えを考えるようになった。浜松市も南の遠州灘に17.5kmに亘って太平洋に面している。防潮堤がなければ近い将来想定されている南海トラフ巨大地震にによる大津波で、東海道新幹線、東海道沿線も浸水の恐れがあるとして対策が急がれていた。防潮堤の総事業費は330億円。浜松市で創業の某住宅メーカーの300億円の寄付を原資に、残りを県と市が負担して2013年4月に着工し、2020年3月に完成した。浜名湖今切れ口から天竜川河口まで17.5km、高さは千年に一度の津波を想定しての15mだ。

昨年ASNのウオーキングで防潮堤見学が計画されたが、コロナ禍で残念ながら中止になってしまった。その後、興味があって個人的に取材に行ってきた。中田島砂丘入り口から登ってみた。景観に配慮して砂をかぶせてあるので、一見防潮堤とは分からない。頂上を西に歩いていくと、やがて凧揚け会場の前にやってきた。浜松市街のほうを見るとアクトタワーがよく見えた。(写真は凧揚げ会場付近)

凧揚げ会場に降りてみた。会場から南の海のほうを見ると、高さ15mの防潮堤が延々と続いて、海の様子を伺うことができなかった。景観が大事か安全安心が大事かと問えば、当然、安全安心の答えが返ってくる。しかし、海の様子が見えなくなったら景観もさることながら、逆に不安になるとの意見もある。実際に東北のある地方では、「万里の長城」の異名をもつ高さ10mの防潮堤が見事に破られて大きな被害に遭った。ある程度の時間稼ぎにはなったが絶対安全ではなかった。莫大な費用をかけて千年に一度に備えるのが本当に必要なのか?答えを出すのは難しい。それよりも「津波てんでんこ」だ。

また別の日に、今切れ口の西の端を取材した。こちらは駐車場も完備され、頂上が綺麗に舗装されてウォーキングにはもってこいで、何組かの熟年夫婦や若いカップルがせっせと歩いていた。(2021.3.11)

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